神殺しのクロノスタシスⅣ

「や、ヤバいヤバいヤバいヤバい」

シルナは完全にビビりまくって、俺の後ろに隠れた。

おい。俺を盾にするなよ。

すると、珠蓮が。

恐れ知らずにも、棺桶にてくてくと近づいた。

強っ。
 
でも今ばかりは、頼もしいことこの上ない。

「ど、どうなってる?棺桶の中…」

「…起きてる」

は?

「珠蓮?今何て…」

「起きてるぞ、白雪姫が」

白雪姫が…起きてる?

いや、寝てたはずだろ?何で起きる?何を動力源に起きた?

朝が来たとでも言うのか?

「ど、どうしてそんな…」 

俺は珠蓮に続いて、恐る恐る棺桶に近づいた。

途端。

白雪姫が、棺桶の縁に手をかけた。

お、おいまさか。

まさか…じゃないよな?

と、思ったが。

白雪姫は目をかっ開き、しかもその目は真っ赤だった。

怖っ。

「ひゃうっ」

シルナも、このビビりよう。

白雪姫って、美人なお姫様…だったよな?

ただのホラー映画になってるんだが? 

白雪姫は更に、ギシャッ、ギシャッ、とロボットみたいな音を立て。

ガクガクと身体を痙攣させながら、球体関節を動かし、立ち上がった。

立ち上がったのだ。人形なのに。

「う、動いてる!動いてるよ羽久!」

「あ、あぁ…。動いてるな…」

何処からどう見ても、勝手に動いてる。

ポルターガイストと言うには、あまりにリアル。

どうしよう。どうすれば良いんだ?

起きなくて良いから、やっぱり寝ててくださいと言ったら通じるだろうか。

そもそも白雪姫って、王子様のキスで目覚めるのでは?

何もしてないのに起きてるぞ?

「シルナ、あれは何なんだ?何で勝手に起きてる?どういう仕組みで…」

「あばばばばば」

駄目だ。完全にビビってる。

頼りにならねぇ。

「とりあえず…白雪姫さん。悪いんだが、ここに王子はいない。棺桶の中にお引取りねが、」

「ウガァォォォォ!!」

無理そうだな。

「ぴきゃぁぁぁ!」

白雪姫の、怒号のような叫び声と。

シルナの間抜けな叫び声が、学院長室にこだました。