神殺しのクロノスタシスⅣ

茨の指輪が紛い物だと分かった以上、こいつらなんて怖くも何ともない。

『白雪姫と七人の小人』も、玩具なんだろう?

だったら、これ以上付き合う義理なんてない。

玩具は玩具箱にお片付け、ってな。

俺はひょいっと水色小人の襟首を掴んで、猫のように持ち上げた。

「あっ!何をするんだ!」

「うるせぇ」

お前のお仲間達には、散々苦労させられたからな。

こんな悪い玩具は、さっさとお引取り願おう。

「シルナ、これもう一回封印し直せるんだろう?」

「え?あ、そうだね。それは簡単な封印だから、私でも出来ると思う」

じゃ、話は決まりだな。

俺は、じたばたと暴れる水色小人の首根っこを捕まえ、棺桶の上まで持ってきた。

「何をするんだ!こら!離せ!」

「黙ってろ。そして帰れ」

「あっ!」

棺桶の中に、ポイッ、と小人を投げ込む。

え?乱暴?

今までの積年の恨みを思えば、これくらい可愛いもんだろ。

俺は、こいつを一発殴ってやりたいと思い続けてきたんだぞ?

殴らずに放り投げたんだから、マシだ。

感謝しろ。

小人を放り投げて返してから、棺桶に蓋をする。

片付け終了。

「この蓋…。開かないように、鎖とか巻いとくべきかな?」

「羽久…。過激だね、珍しく…」

そりゃ過激にもなるわ。

散々困らせられたからな。色んな人間が。

彼らの恨みの分も合わせれば、これくらい優しいものだ。

「よし、じゃあ瞬間接着剤で貼り付けておこう」

俺は瞬着を使って、蓋を厳重に閉めた。

よし。これで簡単には開けられまい。

「間違えて拾う奴がいないように、誰の手も届かないところに封印しようぜ」

「そうだね…。…もし、昔のように…白雪姫が目覚めることがあったとき、誰も傷つかないように…。時空の狭間に封印しよう」

ん?白雪姫が目覚めることがあったとき?

そんなのあったのか?

そういやシルナ、さっき気になること言ってたよな。

昔、白雪姫が暴走して大変だったとか何とか…。

あれって、何のことだ?

玩具の癖に、暴走も何も…。

…そのとき。

「…!何だ?」

珠蓮が、ぎょっとして棺桶を見た。

「え?」

俺も釣られて、棺桶を見ると。

そこには、恐ろしい光景が広がっていた。