神殺しのクロノスタシスⅣ

「シルナお前…知ってた、のか?」

この…『白雪姫と七人の小人』の契約が…茶番だって。

「確証は…なかったんだ。この魔法道具が、本当に、私達の命を奪うことが出来るほどの力を持つものなのか…」

あ。

シルナがさっき、確証がないとか何とか言ってたのは、このことだったのか。

「でも、やっぱりそんなことは出来なかったんだ…」

「いつから…気づいてたんだ?シルナは…」

まさか最初から…とは言わないよな?

これまで律儀に契約に付き合ってた俺達が、馬鹿みたいに思えるぞ。

「ジュリス君達と契約した頃…だったかな?改めて考えてみると、おかしいな、って思ってたんだ」

「おかしい…何が?」

「私達の命を奪えるほどの、高度で…危険な魔法道具が、簡単に封印を破って出てきたことだよ」

…。

…それは…でも。

「賢者の石の封印が解かれたから…そのせいなんじゃなかったのか?」

賢者の石のついでに、他の魔法道具の封印も解けて…。

その中の一つが、この『白雪姫と七人の小人』なんだって…。

「うん…『白雪姫と七人の小人』がこの世に再び出てきたのは、賢者の石の封印が解かれたことが原因だと思う。それは、多分間違いない」

「なら…」

「でも、『白雪姫と七人の小人』に、私達の命を奪うほどの力はないんだ」

…そうなの?

「ナジュ君も、余裕だって言ってたでしょ?毒を解毒するの…」

まぁ、あいつ秒単位で蘇ってたもんな。

いくら、『アメノミコト』製の毒に慣れて、耐性がついていたとはいえ。

毒の力が強ければ、ナジュだって再生に時間がかかる。

それなのにあいつは、秒単位で復活していた。

つまり、それだけ毒の力が弱いということだ。

「本当に危険な…私達イーニシュフェルト魔導学院の教師や、聖魔騎士団魔導部隊の大隊長達を殺せるほどの、強い魔法道具なら…いくら賢者の石の封印が解かれたからって、ついで感覚でこの世に現れることはないって…思ったんだ」

…はぁ。

じゃあ何だ?これは、『白雪姫と七人の小人』は…。

「それから…里にいたとき、聞いたことがある。里の知人から」

「…何を?」

「『遊び感覚で作った魔法道具』が、暴走して大変なことになったんだ…って」

「遊び感覚で作った魔法道具」…だと?

じゃあ、やっぱり…。

「その魔法道具は、童話をモチーフにした人形で…。本来は、里の子供達が遊ぶ、玩具として作られたんだそうだ」

やっぱり…『白雪姫と七人の小人』は。

単なる…子供の玩具でしかなかった、ということなのか?