いつ最後の小人が出てきても良いように、俺はシルナと共に、棺桶の傍で待機していた。

そんな折だった。

シルナは、ポツリと溢したのだ。

「珠蓮君に、助けを呼んだらどうかと思うんだけど」と。

珠蓮と言えば…少し前に、賢者の石の封印を巡る騒動で共闘した。

別れ際、何かあったら呼んでくれと、通信装置代わりの賢者の石の欠片を置いていった。

その欠片は、今も大事に持っている。

それを使うつもりなのか?

「何で珠蓮を呼ぶんだ?残りの小人はあと一人だろ?」

小人一人につき、一人から二人の契約者がつく。
 
三人以上の契約者は必要ない。

従って、あとは未だに未契約の俺達二人が、最後の小人の相手をすれば良い。

わざわざ、また外部から無関係の人間を呼んで、生きるか死ぬかの契約に付き合わせる必要はないはずだ。

それなのに、何故これ以上の応援を呼ぶ?

しかも。

応援を呼ぶにしても、聖魔騎士団ではなく…遠く離れた珠蓮を、わざわざ呼びつけるなんて。

何か理由があるとしか思えない。

「ずっと考えてたんだけどね…。この、『白雪姫と七人の小人』が私達の前に現れてから…」

「シルナ…?」

「このタイミングで、こんな魔法道具がこの世に現れたこと…。どうにも…賢者の石の封印と、無関係とは思えないんだ」

…。
 
…成程。

やっぱり、シルナなりの理由があるんだな。

「それを確かめたいっていうのと…それから、私の記憶が正しかったら…もしかしたら、私と羽久は、契約せずにいた方が良いんじゃないかと…」

「…」

「…あ、ごめん…。何だか煮えきらないことばかり言って…。私にも確証がある訳じゃないから、確かなことは言えないんだけど…」

「別に良いよ」

シルナには、シルナの考えがあるんだろう?

それだけで、理由なんて充分だ。

「もしかしたら、全くの杞憂に終わるかもしれない。私の心配し過ぎなだけかも…」

「それならそれで良いじゃないか?」

心配し過ぎだったね、で終わるなら、それで良い。

むしろ、その方が平和的に解決するじゃないか。

「分かったよ。お前がそう言うなら…珠蓮に助けを求めてみよう」

来てくれるかは、分からないが。

出来るだけのことはしておくべきだ。

後になって、「やっぱりあのとき…」と後悔するよりはマシ。

「ごめんね…羽久」

「気にすんな」

何年相棒やってると思ってるんだ。

俺は、シルナの味方だよ。