そのときの音を効果音で表すなら、ドカッ、とかバシッ、とかそんな優しいものじゃなかった。
肉と肉がぶつかり、しかも骨が砕ける、べキャッ、みたいな鈍い音がした。
俺も、シルナも、天音も、目の前で起きたことが信じられなくて、唖然としていた。
…が、令月とすぐりは、何事もなかったかのように、もぐもぐとケーキの残骸を食べていた。
大物だよこいつらは。
いや、そんなことより。
「な…ナジュ!?何やってんだお前!?」
「何って…。ここ六日間に渡る、積年の恨みを晴らしました。今のは天音さんの分です」
え?天音の分?
ってことは、まさか、
「そしてこれが…僕の分です!」
ナジュは倒れたピンクの胸ぐらを掴み、またしても顔面にめり込む一撃を食らわせた。
ベコッ!!って音がした。マジで。
怖ぇよ。
シルナなんか、恐怖のあまりガクブルしてる。
「はー、気が済んだ…。やっぱりストレスは溜めちゃ駄目ですね。なんて晴れやかな気分でしょう」
めちゃくちゃ良い顔してんな。
いや、それよりも。
「な、ナジュさん…!何で…」
天音が、おろおろしながら尋ねた。
「僕は、ずっとこの時を待ってたんですよ」
と、ナジュが答えた。
この時って…。
「このピンク小人の我儘っぷりには、もううんざりだったんです。三日目くらいで、僕の海のように広い心も、堪忍袋の緒が切れてたんですよね」
海のように広い割には、案外早い段階で限界を越えてたんだな。
海って何処の海?それ狭くない?
「あまりに我儘が過ぎるんでね、一発殴らなきゃ気が済まないと思ってたんですが…。天音さんが契約してる間は、無理じゃないですか」
「え、な、何で…?」
「何でって、僕が痺れを切らしてこいつを殴ったら、天音さんまで連帯責任で、意地でも契約から解放しなかったでしょう」
それは…そうだろうな。
天音を巻き込む訳にはいかないから、とっくに堪忍袋の緒が切れていても、今日までは我慢した。
先に、天音の契約を解除させる為に…。
あ、だからさっき、「天音だけでも先に解放してくれ」って頼んだのか。
天音が解放されたら、速攻ぶちのめすつもりで。
そして今、ナジュはずっとやりたかったことを実行した。
「よくもまぁ散々我儘三昧で、天音さんを始め、僕達を振り回してくれましたね。どうですか?『御礼』の味は」
再度、ピンク小人の胸ぐらを掴むナジュ。
…こえぇ…。
イレースもかくやという怖さだぞ。
「別にケーキなんてどうでも良いですけどね…。天音さんに顔面ケーキとか、ふざけてるんですか?馬鹿にしてるんですかね、人間を」
「う…ぐぐ…」
声の出ない小人。
「他人に優しくするつもりなんて欠片もない癖に、自分だけは他人に優しさを求めるなど…笑止千万」
…よく言った。
その通りだ。
「優しさっていうのは、他人に強要するものではない…。それをあなたに鉄拳で教えてあげるのが、僕の『優しさ』ですよ」
そう、全く以てその通り。
…だと、思うけれど。
その理屈が通用するなら…もとより、ここまで拗れたことにはなっていない。
肉と肉がぶつかり、しかも骨が砕ける、べキャッ、みたいな鈍い音がした。
俺も、シルナも、天音も、目の前で起きたことが信じられなくて、唖然としていた。
…が、令月とすぐりは、何事もなかったかのように、もぐもぐとケーキの残骸を食べていた。
大物だよこいつらは。
いや、そんなことより。
「な…ナジュ!?何やってんだお前!?」
「何って…。ここ六日間に渡る、積年の恨みを晴らしました。今のは天音さんの分です」
え?天音の分?
ってことは、まさか、
「そしてこれが…僕の分です!」
ナジュは倒れたピンクの胸ぐらを掴み、またしても顔面にめり込む一撃を食らわせた。
ベコッ!!って音がした。マジで。
怖ぇよ。
シルナなんか、恐怖のあまりガクブルしてる。
「はー、気が済んだ…。やっぱりストレスは溜めちゃ駄目ですね。なんて晴れやかな気分でしょう」
めちゃくちゃ良い顔してんな。
いや、それよりも。
「な、ナジュさん…!何で…」
天音が、おろおろしながら尋ねた。
「僕は、ずっとこの時を待ってたんですよ」
と、ナジュが答えた。
この時って…。
「このピンク小人の我儘っぷりには、もううんざりだったんです。三日目くらいで、僕の海のように広い心も、堪忍袋の緒が切れてたんですよね」
海のように広い割には、案外早い段階で限界を越えてたんだな。
海って何処の海?それ狭くない?
「あまりに我儘が過ぎるんでね、一発殴らなきゃ気が済まないと思ってたんですが…。天音さんが契約してる間は、無理じゃないですか」
「え、な、何で…?」
「何でって、僕が痺れを切らしてこいつを殴ったら、天音さんまで連帯責任で、意地でも契約から解放しなかったでしょう」
それは…そうだろうな。
天音を巻き込む訳にはいかないから、とっくに堪忍袋の緒が切れていても、今日までは我慢した。
先に、天音の契約を解除させる為に…。
あ、だからさっき、「天音だけでも先に解放してくれ」って頼んだのか。
天音が解放されたら、速攻ぶちのめすつもりで。
そして今、ナジュはずっとやりたかったことを実行した。
「よくもまぁ散々我儘三昧で、天音さんを始め、僕達を振り回してくれましたね。どうですか?『御礼』の味は」
再度、ピンク小人の胸ぐらを掴むナジュ。
…こえぇ…。
イレースもかくやという怖さだぞ。
「別にケーキなんてどうでも良いですけどね…。天音さんに顔面ケーキとか、ふざけてるんですか?馬鹿にしてるんですかね、人間を」
「う…ぐぐ…」
声の出ない小人。
「他人に優しくするつもりなんて欠片もない癖に、自分だけは他人に優しさを求めるなど…笑止千万」
…よく言った。
その通りだ。
「優しさっていうのは、他人に強要するものではない…。それをあなたに鉄拳で教えてあげるのが、僕の『優しさ』ですよ」
そう、全く以てその通り。
…だと、思うけれど。
その理屈が通用するなら…もとより、ここまで拗れたことにはなっていない。


