神殺しのクロノスタシスⅣ

しばらくして。

「完成しました」

ナジュが、出来立てのデコレーションケーキを持って、学院長室に戻ってきた。

「ふわぁぁ…。凄い良い匂いだ」

真っ先に、シルナが反応した。

さすが、イーニシュフェルト魔導学院1の甘党。

しかし、その気持ちは分かる。

ナジュが持ってきたのは、イチゴを始め、フルーツをたっぷり乗せたデコレーションケーキ。

お店で売っているものほど綺麗ではないが、素人が手作りしたにしては、上手過ぎる。

しかも、ナジュは。

「実はケーキ作りは初めてなんで、ちょっと緊張してます」

とのこと。

初めてでこれって、お前才能の塊なんじゃないか?

「済みません、才能の塊です」

やっぱり?

今日ばかりは、自惚れても良いと思うよ。

「凄いね、ナジュさん…。本当に初めてなの?」

「お菓子作りって、そもそもそんなに得意じゃないんですよ。普段の食事作りは得意なんですけど」

いや、これだけ出来れば、全然特技の一つに数えて良いと思うけどな。

そもそも、食事の必要のない魔導師が、料理得意だってだけで、かなり凄いことだと思う。

器用なんだなぁ。

「いや、充分凄いと思うよ」

天音は絶賛である。

俺も同感だな。

更に。

「凄いね不死身先生。今度桜餅作って欲しい」

「俺はいちご大福が良いな〜」

何処から現れたのか、令月とすぐりも絶賛している。

お前ら、いつの間に入ってきたんだよ。

そして、シルナは。

「ナジュ君…。今度私にチョコケーキを…。一回で良い。私にチョコケーキを作ってくれないだろうか…」

真顔で頼んでる始末。

まぁ、お前はそうだろうよ。

「小人さん、ほら」

天音が、ナジュの特製ケーキをピンク小人に見せた。

「ナジュさんが、ケーキ作ってくれたよ。凄い上手だよ、ほら。美味しそう」

手作りケーキが食べたいと言って、こんなケーキが出てきたら、万々歳だが。

この小人は、如何せん罰当たりで、有り難みがないので。

「ふーん…。何だか素人っぽくて、貧乏臭いなぁ」

この反応である。

そりゃ確かに、ナジュはパティシエでも何でもない。素人かもしれないが。

でも、素人でこれだけ出来たら、充分過ぎるだろう。

本当罰当たりだ。

「そんなことないよ。ちゃんと美味しいよ。ほら、切り分けてあげるから食べてみて」

そう言って、天音がケーキナイフで、ケーキをカットしようとした。

すると。

「あ、ちょっと待って。そのお皿、そのまま頂戴」

「え?あ、うん、良いよ」

と、小人が皿ごと、デコレーションケーキを取った。

何だ、やっぱり気に入ったんじゃないか。

皿ごとそのまま食べたいとは、なかなかに夢があることをす、

「えい」

あろうことか。

ピンク小人はにやにや笑いながら、デコレーションケーキの皿を、思いっきり天音の顔面に押し付けた。