神殺しのクロノスタシスⅣ

恐らく相当急いだのだろう。

ナジュは、ほんの30分かそこらで戻ってきた。

早いな。
 
が、その間にこちらも、たこ焼き器の準備をしておいたぞ。

長く使われてないせいで、ちょっと埃被ってたから。綺麗に洗っといた。

「さて、それじゃあたこ焼き…焼きますか」

そう言って、ナジュはテキパキと生地を混ぜ始めた。

「じゃあ、僕材料切るね」

と、包丁を持つ天音。

俺も手伝おう。出来ることを。

えぇと…。こっちがソーセージ…こっちがチーズ。これは…お餅?

色々あるんだな。

「絶対たこだけじゃ満足しないと思って。色々買ってきたんですよ」

生地をかき混ぜながら、ナジュがそう言った。

成程。その判断は、絶対正しいと思うぞ。

我儘帝王が、たこだけで満足するはずがない。

熱したたこ焼き器に、生地を流し入れ、天かすや、刻んだネギ、紅生姜を散らす。

すげー本格的。

それをテキパキ作れる、ナジュが凄いと思う。

それなのに恩知らず小人は、作ってる様子には全く興味がないようで。

こちらに背を向けて、スナック菓子を齧りながら、寝そべって漫画読んでる。

食事の前に菓子を食べるとは、なんてマナーのなってない奴だ。

こっちは苦労して作ってるんだから、少しでもその様子を見ろよ。

たこ焼きにしてもそうめんにしても、霞で出来てんじゃねぇんだぞ。

と、俺が苛ついている間に。

「焼けました」

こんがりと良い色に焼けたたこ焼きを、専用の容器に盛る。

おぉ。お店で買ったたこ焼きみたい。ちょっと小さいけど。

そこにソースとマヨネーズ、青のり、鰹節をかけると、本当にお店のたこ焼きだ。

上手に作るもんだなぁ。

「はい、たこ焼き。焼き上がったよ」

天音が、焼き立てアツアツのたこ焼きを、ピンク小人に持っていった。

するとピンク小人は、のろのろ起き上がった。

「何だ、ようやくか〜…。全く遅いんだから…」

黙って食えこの野郎。

「熱くて食べられないよ。ちゃんと冷まして」

「あ、ごめん…」

軽く仰いで湯気を飛ばし、少し冷ましてたこ焼きを渡す。

爪楊枝付きで。

すると。

「もぐもぐ…んん?」

あ?

たこ焼きを齧った小人は、顔をしかめて首を傾げた。

何だよ、今度は。

ご要望通りの、完璧なたこ焼きだろうが。何処に難癖をつけるところがあるんだ?

「これ、たこ入ってる?」

「え?入ってるよ、ちゃんと大きめに切った奴を…」

たこが小さかったら、絶対文句言うに決まってるから。

文句を言われないくらい、存在感のあるたこのぶつ切りを入れた。

しかし。

「僕、たこ嫌いなんだけど?」

お前、もう一生たこ焼き食うな。

焼きの部分だけ食ってろ。