神殺しのクロノスタシスⅣ

翌日。

おもむろに、ピンク小人がこう呟いた。

「たこ焼き食べたい」

…また始まったよ。

もう一回言うけどさ。何でこいつ、こんなにグルメなんだ?

食べ物のレパートリー、豊富過ぎるだろ。

「…今日はたこ焼きか…」

天音が、疲れたような顔で呟いた。

毎日毎日、次は何だろうと思ってるんだろうな。

「用意してよ、たこ焼き」

「はいはい…」

「全く。いつもいつも、僕が言うまで用意してくれないよね。優しくないんだから…」

お前が何を欲しがってるかなんて、言わなきゃ分かる訳ないだろ。

エスパーじゃないんだから。

しかも用意したところで、お前すぐ難癖つけて、結局ろくに食べないじゃん。

何でも食べたがるのはまだ良い。しかし、用意してもらったならちゃんと食べろよ。

どうせ食べないものを用意させられる、天音とナジュの気持ちにもなってみろ。

「はいはい、ごめんね。買ってくるから…」

「何その言い方?優しくない!」

「分かったよ。すぐ買ってくるから、待っててくれる?」

こんなにも優しく付き合ってくれている天音を、優しくないとは。

よく言えたな、そんなことが。

これまでの小人も、全員ろくでもなかったけど。

このピンクは、小人の中でも群を抜いて最低だな。

「たこ焼き…。何処のお店が美味しいかな?」

「駅前デパートの中にあるたこ焼き屋さんが美味しいらしいよ。生徒が言ってた」

と、シルナ。

良い情報知ってるな。

「シルナ、お前甘いもの以外でも、食べ物の情報知ってるんだな」

「うん。そこのたこ焼き屋さん、たこ焼き風ベビーカステラっていうのも売ってて、それが凄く美味しいんだよ」

ごめん。やっぱり前言撤回するわ。

結局、甘いものの情報しか知らないんじゃないか。

「じゃあ、デパート行ってきます」

「え?ちょっと、何考えてるの?」

天音が出かけようとするのを、小人野郎が止めた。

あ?

「何考えてるって…何が?ちゃんとたこ焼き買ってくるよ…?」

「買ってくる?お店のを買ってきて、僕に食べさせる気なの?」

はぁ?

こいつ、まさか…。

「たこ焼きくらい、手作りしてよ。簡単でしょ?」

あろうことか。

たこ焼きを、家庭で作ることを要求しやがった。