神殺しのクロノスタシスⅣ

しかし。

俺が到着した頃には、時既に遅し…と言うか。

もう、修羅場が勃発していた。

だって、オーネラント宅の玄関先で、シルナが土下座してんだもん。

もうこの時点で、凄まじい修羅場。

しかも、シルナが凄まじい勢いで泣き叫んでいるものだから。

通りすがりのご近所さんが、何事かと通りに出てきていた。

あいつ、マジ何してんの。

「うわぁぁぁぁんごめんなさいごめんなさい!私の為に争わないで!ごめんねぇエヴェリナちゃん!うわぁぁぁん泣かせてごめんねぇぇぇ!」

別に、お前の為に争ってる訳じゃねーだろ、という。

至極真っ当なツッコミは、後にして。

俺は、急いでシルナに駆け寄った。

見てみろ。玄関先で応対していたエヴェリナ母が、仰天して固まっている。

何だか玄関が騒がしいから、何事かと思って出てきてみたら。

何故か、小汚いおっさんが絶叫して号泣しながら、懇親の土下座を披露。

そりゃ目が点にもなるわ。

俺だって、他人だったらぎょっとして逃げるもん。

しかし俺は他人ではないので、どうしても関わり合いにならなければならない。

「ちょ、シルナ馬鹿、何やってんだ!」

オーネラント家とご近所様に、大迷惑だろうが。

そう思って、シルナに駆け寄ったのだが。

「絶対にぃぃ!絶対にエヴェリナちゃんを、りっ、立派な子に育ててみせるから!お願いだから学校やめるなんて言わないでぇぇぇ!お願いぃぃぃぃ!うわぁぁぁん!」

イーニシュフェルト魔導学院学院長、錯乱。

しかしこれは、シルナの魂の叫びでもある。

「どっか行かないでぇぇぇ!帰ってきてよぅ!お願いだからぁぁ!ぴぇぇぇん!やめないでやめないでやめないで!」

こえぇよ。

「ちょ、馬鹿シルナ!人様の家の前で何やってんだ!」

俺は、ようやくシルナにしがみつき、何とか立たせようとするも。

このおっさん、涙と鼻水と涎まみれで、顔ぐっちゃぐちゃ。

グロ画像レベル。

顔全体にモザイクかけなきゃ、お茶の間にお見せ出来ない。

それなのに、モザイク処理もなしに、このグロ画像を見せられている俺やエヴェリナ母は。

それはもう絶句して、言葉が出なかった。

キモいとかそういう次元を通り越してもう、あれだよ…。

…ヤバい。

「帰ってきてぇぇぇ!帰ってきてよぉぉぉぉぉ!うぇぇぇぇん!ぴぇぇぇぇん!」

言ってることとやってることが、お菓子買って欲しい幼児並み。

それを、良い歳したおっさんがやってるんだから。

想像してみ?それだけで気持ち悪いだろ?

実際見せられてる俺達は、もっとヤバいから。

今だけ眼球取り外したい。

「エヴェリナちゃぁぁぁん!ぴぇぇぇぇん!」

「ちょっ…シルナ!いい加減に…」

と、俺がシルナを止めようとすると。

絶句する、エヴェリナ母の後ろから。

「なぁ、もう、やめにしよう」

え、何を?シルナの人生を?

と思って顔を上げると、そこには。

泣きべそをかいたエヴェリナ本人と、そのエヴェリナに付き添った、エヴェリナ父の姿があった。