神殺しのクロノスタシスⅣ

結果。

「こんなに取れないなんて、流し方が悪い。優しくない」と喚き散らす小人を、天音が必死に宥め。

優しくないも何も、お前の反射神経がゴミ過ぎるんだろうが、と言いたい気持ちを抑え。

五、六回目のチャレンジで、ようやく一塊、そうめんをすくうことに成功した。

おせーよ。

そして、ナジュが用意したそうめんつゆに浸け、薬味を混ぜて一口。

念願の、流しそうめんの味は。

「…ふーん。思ったより美味しくないなー」

そこの竹の余りで、こいつの脳天を殴りたくなった。

この罰当たりが。

「そう?俺は美味しいけどなー。薬味がまた絶妙でさ」

「うん。昆布出汁が利いてて、僕は好きだよ」

元暗殺者組の方が、余程素直で良い子だ。

夜間脱走、及び学院長室への不法侵入の常習犯であるこの二人を、良い子だと思える日が来るとは。

ピンク小人に比べれば、大体誰でも良い子だよ。

「え?こんなのが美味しいと思うなんて、君達貧乏舌だね」

こんなこと言うんだもんな、平気で。

良い子からはかけ離れている。

「大体、こんな寒いのに、冷たいそうめんなんて食べられないよ」

おっ…。

お前が、そうめん食べたいって言い出したんだろうが。

だから用意したんだぞ。木材から。

「やっぱりいーらない。温かいうどん食べたい」

天音とナジュと、令月とすぐりまでもが動員されて、およそ三時間近くかけて用意した、渾身の流しそうめんは。

たった一口だけ食べて、そっぽを向かれた。

「…控えめに言うけど、この人最低だね」

「あ、そうめんは勿体無いから、俺と『八千代』で食べるよ」

「…あぁ…」

ついでに、通りすがりの生徒も呼んでくるよ。

折角丹精込めて用意した流しそうめんだ。

例えこの我儘野郎がそっぽを向いても、絶対無駄にはしない。