神殺しのクロノスタシスⅣ

「はい、出来たよ」

「ありがとう、二人共…」

およそ、一時間半後。

グラウンドの裏手には、本格的な竹の流しそうめん器が出来上がっていた。

ちゃんと、一本の竹から作ってある。

うっかり惚れ惚れしてしまいそうな出来だが、実はこれを作ったのは、俺ではない。

メインで作業してくれたのは、令月とすぐりである。

人手が必要だから手伝ってくれ、と招集をかけたら、すぐ動いてくれた。

イレースにも声をかけたが、

「実は小人の要望で、流しそうめんをつくっ、」

「お断りします」

と、まだ話を聞いてもいないのに断られた。

イレース。お前は賢い。

こんなの、最初から関わらないのが賢明だ。

一方で、この元暗殺者組は、非常に有能な働きぶりを見せた。

まず、

「竹を買ってこないと。ちょっとホームセンターに…」と、天音が言い出したところを。

「それくらい、山に入ればいくらでもあるよ」と、令月とすぐりは、二人で学院の敷地内を越えて、外に出ていった。

あいつら何処に、何をしに行ったんだと思ってたら。

僅か十五分後に、伐採したばかりの竹を担いで戻ってきた。

山に入って、自生している竹を切ってきたのだとか。

令月が、小太刀で根本からばっさりと切り落とし。

倒れた竹を、すぐりが糸で絡め取って運んできたそうな。

そのときは、「こいつらすげぇ」と圧倒されていたけれど。

よく考えてたら、いくら野生とはいえ、勝手に木を伐採するのは違法なのでは?

と、後になって気づいた。

済みません。後で、然るべきところに謝っておきます。

命懸かってんだよ。許してくれ。

良い子の皆は、真似しちゃ駄目だぞ。

ともかく、その竹を使って、令月とすぐりは手際良く流しそうめん器を作った。

小太刀をのこぎり代わりにして、ギコギコと竹を切り、半分に割り。

残りの丈で骨組みを作って、蔦で竹と竹をしっかり縛り、水が流れるようにした。

設計図もないのに、よく一発勝負で作れたものだ。

二人共、俺達に内緒で、休日にDIYとかやってないよな?

と、二人がここまでして、流しそうめんの支度を整えたのに。

この立派な流しそうめん器を見た、ピンク小人の第一声は、

「ふーん。時間かかった割には、意外と普通だなー」

だった。

令月、すぐり、お前はこの小人を袋叩きにしても良い。

この「意外と普通」な流しそうめん器を作る為に、どれだけ苦労したと思ってるんだ?

お前はもう少し、感謝というものを覚えろ。

優しさより、感謝と謙虚さを学ぶのが先だろ。明らかに。