神殺しのクロノスタシスⅣ

一時間後。

流しそうめんの準備が整った。

「はい、出来たよ」

素晴らしい、流しそうめんセットである。

天音が近所のスーパーを梯子して、季節外れのそうめんをたくさん買ってきてくれ。

更にそこに、出汁から取ったナジュの特製そうめんつゆと、

切ったネギ、すりおろした生姜、青じそ、刻み海苔、ミョウガ。

それから冷やし中華風に、錦糸玉子とハム、塩揉みしたキュウリまで。

完璧過ぎる布陣だ。

時期じゃないのに、めっちゃ美味しそうに見えてくる。

この上ない、完璧な流しそうめん。

「じゃあ流すからねー」

天音が、茹でてザルにあげたそうめんを一掴み、流しそうめん機に流そうとした、

そのとき。

「…え?何これ?」

ピンク小人は、喜ぶでもなく、箸を持つ訳でもなく。

怪訝そうな顔をして、目の前の流しそうめんキットを見つめていた。

「何これって…。流しそうめんだよ?食べたいって言ってたよね…?」

首を傾げる天音。

あぁ、確かに食べたいと言っていた。

しかし。

「僕が食べたいのは、こんな機械の流しそうめんじゃないよ」

…まさか、こいつ。

「ちゃんと手作りで用意してよ、竹の器と、竹の流しそうめん器。ちゃんと外でさー」

キャンプやイベントでやるような…あんな本格的な流しそうめん大会を希望しているのか。

たった一人の為に?何様だこいつ。

小人様?

「え、そ、そんな…。いや、でも竹なんかないよ…」

これには、天音も絶句。

「…そんなこと言い出したら嫌だなーと思ってたら、案の定言い出しましたよ。どうしましょう天音さん。いっそのことご要望通り作って、そうめんの代わりにこいつ、流します?」

全て水に流してなかったことに、ってそんな上手いこと言ってる場合か。

「い、いや、それは…。でも、竹から作るなんて…。まず材料が何処にあるのか分からないよ。竹なんて、普通のホームセンターで売ってるのかな…?」

作る気なのか、天音。

そうだな…。拒否権、ないんだもんな。

「売ってる分には売ってるでしょうけど…。かなりの大作業になりそうですね」

「うん…」

「この小人、童話の世界から来た癖に、何で風流を求めてんですかね…」

全くだよ。

しかし、小人はそんなナジュを、じろりと睨む。

「何?優しくないねー、君。ちゃんと優しくしてくれないと、契約は解かないからね」

「はいはい、分かりました分かりました」

こういうのはもう、優しさではない。

優しさの範疇を越えてるよ。

「と、とりあえず…その、皆で手伝って…手分けして、作ろうか。こうなったら」

と、シルナが提案し。

俺達は急遽、放課後を流しそうめん作りに費やすこととなった。