神殺しのクロノスタシスⅣ

こうして始まった、優しさの小人との契約。

まず手始めに。

「あー、何だか喉乾いたな〜。ねぇ天音
君」

「え、うん。何?」

気安く呼びやがって。

「飲み物持ってきてよ。気が利かないなぁ」

「…」

…天音。

お前は今、この小人を殴っても良い。俺が許す。

ヤバい。俺は今回の騒動で、非常に思考が暴力的になってる。

だって本当にムカつくんだもん。

駄々っ子モードのシルナを、まとめて五人くらい相手にしてる気分。

そんなの、ぶっ飛ばしたくなるに決まってるだろ。

「えーと…。じゃあ紅茶でも…」

「紅茶は渋いから嫌い」

「…じゃあ、ミルクで良いかな?」

「ミルク〜?…折角なら、ミルクセーキにしてよ」

「…分かった…」

「そうそう、ちゃんと僕に優しくしてね〜」

天音は、とぼとぼとミルクセーキを用意しに行った。

…。

「…ナジュ。俺はこのピンクと契約しなくて、本当に良かったと思ってるところだ」

「奇遇ですね、羽久さん。僕も今、こいつと契約しなければ良かったと思ってるところです」

でも後の祭りだな。残念なことに。

しかも、このピンク。

ムカつくのは、これだけではない。

「あの…用意出来たよ」

天音は、ほかほかと湯気を立てるミルクセーキを持ってきた。

優しいなお前は。こんな奴にわざわざミルクセーキ用意してあげるなんて。

俺だったら、「これで満足しとけ!」って水道水ぶちまけてるわ。

それなのに。

「え、ホット?何で?僕冷たいのが良かったのになぁ」

頭から氷水浴びせてやろうか。少しは頭が冷えるだろ。

「あ、ご、ごめん…」

謝らなくて良いんだぞ天音。

「それにさぁ、飲み物持ってくるなら、お茶請けも用意してよ。気を利かせてさぁ」

「…ごめん…」

謝らなくて良いって。

「ちゃんと優しくしてくれないと、全然溜まらないよ、これ」

空っぽの小瓶を振る小人。

こいつは、我儘と優しさを履き違えている。

「えっと…お茶請け…クッキーで良い?」

「ケーキ食べたい。チョコとチーズとショートケーキを一口ずつ」

もう、ハンマーで殴っても良い。

シルナより我儘じゃないか。

少なくとも、シルナはチョコケーキ一つで満足するぞ。

「分かった…えっと、買ってくるね」

「もー、それくらいちゃんと用意しておいてよ。優しくないな〜」

「えーと…ごめん…」

「良いから早く買ってきて。急いでよね〜」

「…」

天音は、釈然としない顔で、ケーキを買いに学院長室を出ていった。

…買いに行ってやるのか、天音…。お前は優しいな…。