神殺しのクロノスタシスⅣ

…やっぱり、一発くらい殴っておけば良かった。

候補が二人いるからって、二人共選ぶような真似をしやがって。

「よし、これで契約は結ばれた…。さっきも言った通り君達二人には、僕に『優しさ』を教えてもらうよ」

居丈高に、ピンク小人が言った。

何でこんなに偉そうなんだよ、こいつらは。

白雪姫原作の小人への、風評被害も甚だしい。

謝れ。

原作の、優しい小人に謝れ。

「えぇっと…。優しさって…どう教えたら良いの?」

と、もっともな質問をする天音。

確かに。

優しさと一口に言っても、なかなかに抽象的だよな。

いや、これまでもなかなかに抽象的だったけど。

「誰かに優しくしているところを、見せれば良い?」

おっ、それは良い方法だ。

それなら、天音は楽勝だよな。

天音は普段から、優しさの塊だから。

日頃の行いからしても、徳しか積んでないような奴だ。

紙で指を切った、程度の傷で保健室に行っても、嫌な顔一つせず優しく手当してくれることで有名な、我が校自慢の保健室の先生。

七日どころか、半日くらいでノルマ達成出来そうだ。

問題はナジュだな。

「羽久さん、さっきから僕に当たりが強過ぎません…?」

「あぁ、済まん…。つい、日頃の行いで判断してしまった」

「大丈夫ですよ。僕、いつもリリスに『ナジュ君は優しいね〜』って言われてますし」

悪いが、恋人フィルターを通して見た判断は、客観的であるとは思えない。

…本当に大丈夫なのか?

「それで?どうやって優しさを教えたら良いんですか?」

「簡単だよ。僕に優しくして」

ピンク小人は、いけしゃあしゃあとそう言った。

…は?

「僕はこれから七日間かけて、君達二人に優しくしてもらう。僕が君達の行為を優しいと判断したときのみ、この小瓶は満たされる」

…。

「だから心を込めて、ちゃんと優しくしてね。でなきゃ契約は終わらないよ。死にたくなかったら、精々頑張って僕に優しくすることだね〜」

…。

…成程、そう来たか。

…俺、こいつと契約しなくて、本当良かったわ。

俺がもし契約していたなら、この時点でこいつの脳天に、拳骨を叩き込んでるところだ。

「…ね?羽久さん、今この小人に手を上げていない時点で、僕はあなたより優しいということが証明されましたよ」

と、呟くナジュ。

「あぁ、本当だ。確かにお前は、俺より優しいよ」

少なくとも、俺よりはな。