神殺しのクロノスタシスⅣ

「ピンク小人さん。学院長はおっさん、羽久さんはあんなに冷たい。なら、契約するべきは僕か、そして天音さんですよ」

あ。

そうか、ナジュと天音もフリーなんだよな。

二人にも、契約権はある。

何より。

「ナジュはともかく、天音は最適だな」

「ちょっと。何で僕は『ともかく』なんですか?」

お前が優しいかどうかは、要相談だが。

天音の優しさと来たら、シルナに並ぶほど。

優しさを教える役としては、この上ない適任だ。

「どうだ、天音?自信あるんじゃないか?」

天音なら、優しさの化身だろう。

イーニシュフェルト魔導学院、唯一の癒やしとまで呼ばれているくらいだからな。

え?誰が呼んだのかって?

俺だよ。

「ぼ、僕…?自分が優しい自覚はないんだけど…」

またまた謙遜して。

そういうところも、謙虚で良いよな。

「でも…他に契約する人がいないなら…僕が、喜んで」

天音が、そう申し出た。

よし。

しかし。

「いや、でもそれは軽率な判断ですよ。天音さんの見かけに騙されてはいけません」

ナジュがそう言った。

何だよ、見かけに騙されるって。

天音に、裏も表もないだろ。こんなに素直な奴なのに。

「ふっ、皆さん騙されてますね?天音さんは、確かに優しいかもしれませんが、それは表の顔。彼は裏の顔があって、そこでは情け容赦のない、天音さんのトゥルーフォームが隠されて…」

「あぁぁぁ!ちょっと!ナジュさんそれ以上は駄目だから!」

…?

何の話だ?

「それに比べて、僕は裏表のない、清廉潔白な優しさの塊ですから。優しさを教えるには、僕が適任だと思いますよ」

学院1腹黒い教師が、何か言ってるぞ。

「…ふーん…?まぁ、二人共若いし、そっちの男よりは優しそうか…」

チラリ、と俺の方をジト目で見て、ピンク小人が呟いた。

悪かったな。

天音と比べて優しくない、と言われるのは納得するが。

ナジュと比べて優しくない、と言われるのは、なんか腑に落ちないんだが?

「…羽久さんは、僕を何だと思ってるんですか…」

俺の心を読んだらしいナジュが、ぼそっと呟いていた。

お前は頼もしい味方ではあるが、しかし、お前に清廉潔白さは求めてないからな、俺は。

「…ともあれ、決めるのは、このくそったれ小人だな。おい、誰にするんだ?」

見た目も中身も優しい、ド安定の天音にするのか。

それとも、ワンチャン優しいかもしれないナジュで、博打を打ってみるか。

あるいは…。

「候補は二人かぁ…そうだな…。じゃあ…二人に教えてもらえば良いだけだ!」

「あっ!てめっ…!」

せめてどちらかに決めてくれれば、命の危機に晒されるのは二人のうち、どちらかだけだったのに。

あろうことか、この小人。

候補となったナジュと天音、両方に茨の指輪を嵌めた。

止める間もなく、契約は結ばれた。

ナジュと天音の二人に。