神殺しのクロノスタシスⅣ

「うわー…。やば…」

これには、ナジュさんも目を白黒させ。

「…近寄らない方が良いですよ、今は」

と、危機回避を勧めるほど。

しかし今の私には、何を言われても、耳に届いていなかった。

それほど、怒って…そう。

怒り狂っていたから。

「…いい加減にしなさい、あなたは」

私は、地獄の底から声を絞り出した。

「え、あ、ちょ。あの。大丈夫、大丈夫だよ。そう…その、冗談だから」

…大丈夫?

…冗談?

…何が?

「ほら…見てよこれ。いっぱいになったよ、瓶が。充分、怒りを教えてもらったよ」

…あぁ、そうですか。

それは良かったですね。

「あ、あはは。脅しだよ、脅し。ただ脅しただけ。あとひと押しだったから、ちょっと脅してやれば、もういっぱいになると思って…それで言っただけだよ。ちょっとした軽口じゃないか〜…。あはは…」

へぇ、脅し。軽口。

それは随分…冗談がキツいですね。

私の逆鱗に触れる冗談でしたよ。

「も、もういっぱいになったから…はいっ、契約終わりっ」

小人がそう言うなり。

私の指から、茨の指輪が消えてなくなった。

けれど、私はそんなことには気づいていなかった。

どうでも良い。そんなこと。

契約がどうとか、今はどうでも良い。

それより私は。この小人が棺桶の中に消える前に。

「そ、それじゃあ、小瓶もいっぱいになったし…僕は帰っ、」

「待ちなさい」

私は、棺桶に帰ろうとする小人の襟首を、ガッチリと掴んだ。

…捕まえましたよ。

「あなたには、少々…お礼をさせてもらわないと、気が済みません」

「ひ、ひぇぇぇぇ!?」

世の中には。

冗談で済ませて良いことと、悪いことがあるのだと…教えてあげましょう。










「…アホですね、その小人…。世の中、怒らせて良い人と悪い人がいるっていうのに」




ナジュさんの呟きは、小人の悲鳴に掻き消された。