神殺しのクロノスタシスⅣ

「激苦チョコだったり激辛チョコだったり、昨日はチョコがカビてた」

「そ、それはそうだけど…」

「もうシルナのチョコは、フラグでしかない。遠慮しとく」

あぁ。

とうとう羽久さんが、シルナ学院長のチョコレートを拒否するまでに。

「でも、今回は大丈夫だよ羽久」

「は?」

「だってこのチョコ、私、さっき味見したから」

成程、そう来ましたか。

「ちゃんと美味しかったよ!だから安心して食べて」

「そうなのか…?苦くも辛くも、酸っぱくもないんだろうな?」

すっかり、チョコレートへの警戒心が強くなってしまっている。

「大丈夫。ちゃんと甘いよ」

「カビてないよな?」

「昨日買ってきたばかりだし、ちゃんと冷蔵庫に保管してたし」

それなら大丈夫そうだ。

更に。

「クュルナちゃんもどうぞ、はい。食べてみて」

私も味見要員として、チョコレートを差し出された。

羽久さんの為の毒味なら、喜んで。

チョコレートを一つ取って、ひょい、と口に入れる。

もぐもぐ。

…ごくん。

「はい、美味しいです」

「良かったー!だよね!大丈夫だよね!」

「はい。大丈夫だと思います」

いや、大丈夫であって欲しい。

不幸続きの羽久さんに、少しでもリラックス出来る何かを提供したい。

「じゃあ、もらうか…」

「うんうん、食べて食べて!」

「もぐ」

と、羽久さんがチョコレートを口に入れた、

その瞬間。

「ガリッ…むぐっ!?」

今、ガリッて言いませんでした?

「げほっ、げほごほっ」

盛大に噎せる羽久さん。

私は、慌てて羽久さんの背中をさすった。

まさか、そんな。このチョコレートは大丈夫なはず。

「ど、どうしたんですか?」

「…歯が…歯が欠けた…」

欠けた!?

「何だこれ…?何が入ってたんだ…?」

羽久さんが口の中に手を入れて、何かを摘み出した。

少々はしたないが、今はそれどころではない。

「…!これ、画鋲…!?」

「ひょえっ…」

これには羽久さんも学院長も、私もびっくりして、しばし呆然としてしまった。

…チョコレートの中に、画鋲が仕込まれているなんて。

悪戯にしては、殺意が高過ぎる。