神殺しのクロノスタシスⅣ

「確かに、いつもなら避けられそうなもんだけど…。これだけは、当たるようプログラムされてるって言うか…不思議と避けられないんだ」

「…」

「降ってきて、『あ、やべぇ!』と思って、ゴツンと当たるまでが一連の流れ、みたいになっててさ…。避けようとしても足が硬直して動かないし、そもそも避けようという発想がない」

…それもそうだろう。

避けられてしまったら、不幸な目に遭えない。

「成程…。上手いこと出来てるもんですね」

「そうなんだよ…」

「ちなみに、今日は松葉杖ついてますけど、その足首はどうしたんですか?」

「階段から落ちた」

酷い。

あんまりだ。

「それはまた…一周回って、シンプルな怪我ですね」

「しかも、階段の一番上から落ちたんだぞ…。数段踏み外すとかじゃなくて…」

最初の頃は、数段踏み外すだけだったのに。

今となっては、二階から一階に真っ逆さま。

大怪我どころか、打ちどころによっては命さえ危ない事故だ。

死なせてしまったら、むしろ怒りどころではなくなるから、死ぬことはないと分かっていても…。

「じゃあ、腕を吊ってるのは?そのときの怪我ですか」

「いや、これは…実技授業のときに、魔導人形が暴走して…」

「…もうめちゃくちゃですね」

「そうなんだよ…」

意志を持たないはずの魔導人形が、何故暴走するのか。

何者かの悪意が働いているとしか思えない。

そう、赤い小人の悪意が。

「ついでに肋骨も折れたからな…。いたたた…息吸うと痛い」

「そりゃそうでしょうね」

「今…頭の上にナパーム弾が落ちてきても、俺は驚かないよ」

「今羽久さんの上にナパーム弾が落ちてきたら、僕達も巻き添えになるんで…。落ちてくるとしたら、一人になったときじゃないですか?」

「そうか。じゃあ…一人にはならないようにしよう」

あながち冗談に聞こえないから、恐ろしい。

羽久さんが今一人になったら、何が起きるか。

一人でなくても、こんなに酷い目に遭っているというのに。

「元気出して、羽久。チョコあげるから」

シルナ学院長が、いつも通りチョコレートの差し入れで、羽久さんに元気を出してもらおうとしたが。

「いや待て。チョコは要らない」

「え!?何で?元気出るよ!?」

「思い出せよ。この五日間、俺がチョコレートのせいでどんな目に遭ったか」

あっ…。

それは…あまり思い出したくない。