神殺しのクロノスタシスⅣ

この五日間で、羽久さんがどんな不幸に遭ったと思う?

それはもう、数え切れないほど、計り知れないほどだ。

不幸な目、とは言っても、起きる事象は大小様々だ。

髪にガムがくっつくとか、ホットチョコレートを膝の上にぶちまけるとか。

それだけでも、私は非常に腹立たしかったけれど。

最近では、そういうことはなくなった。

今の羽久さんは、もっと悲惨だ。

見るに耐えない。

というのも、三日目を境に、羽久さんの身に起きる不幸のレベルが上がっている。

髪の毛にガムとか、頭に金ダライが落ちていたのが、可愛く見えるほど。

最初は「コントみたいだ」と笑っていたナジュさんも(実はこれにもちょっと苛ついていた)、笑えなくなってきているほどに。

最近の羽久さんは、不幸に遭う頻度がもっと上がっている。

もう、安全に校舎内を歩くことも出来ないほどに。

「…いたたたた…」

「あぁぁ…あぅあぅわー…。羽久大丈夫…?」

「あぁ…死ぬかと思った…」

今日の、羽久さんは。

頭と足に包帯を巻き、片腕にギプスを嵌めて、もう片方の腕で松葉杖をついていた。

何処からどう見ても…重傷者である。

こんな傷を作った原因は、勿論赤い小人にある。

全ては、私の怒りを駆り立てる為だ。

「頭は?頭どうしたの、羽久。その傷は」

「階段…の下を通りかかったとき、机が降ってきた…」

それに直撃したと。

最初の頃もそんなこと言ってたけど、あのとき降ってきたのは椅子だった。

今では、椅子から机にバージョンアップしている。

一体何があったら、どんなシチュエーションで、階段から机が降ってくるようなことがあるのだ。

このまま七日目を迎えたら、もう落ちてくるのは机じゃ済まないんじゃないだろうか。

と、思っていたら。

「それから…外を歩いてたら、上から煉瓦が落ちてきて…追撃された」

やっぱり、既に机どころではないものが落ちてきている。

煉瓦って。それはもう凶器だ。

ナイフが落ちてきても、何ら驚くことはない。

「何とか避けられないんですか?いつもの羽久さんの反射神経なら、容易に躱せるはずでは?」

と、尋ねるナジュさん。

その通りだ。

いつもの羽久さんなら、空から槍が降ってきたって、躱してみせることだろう。

あるいは、迎撃するか。

しかし。

「それが、何て言うか…避けられないんだよ、これだけは」

羽久さんは、痛みに顔をしかめながら言った。