…俺も、ちょっと冷静になった。
「…悪かったよ、責めるようなこと言って…」
ナジュには、ナジュなりの考えがあったんだ。
その上で、最善と思われる行動をしたのだ。
それを責めたのは、俺が悪かった。
「別に良いですよ。大体、あれだけ『退学届寄越せ!』って言ってた母親だって、僕が本当に退学届渡したとき、内心ちょっとびっくりしてましたし」
マジで?
あれだけ退学退学言っといて?
まさか、そんなにあっさり退学届をもらえるとは、思ってなかったのか。
「本物の退学届を見て、自分がやろうとしていることの現実が分かったんでしょう」
「そ、そうか…」
「本人は内心『退学したくない』の一点張り、父親は日和見、何なら母親もちょっと動揺してる。こんな状況じゃ、勢いに任せて退学届に記入したとしても、それを投函するまでには、何処かで踏み留まるでしょう」
…ナジュが心を読んで判断した読みだから、当たっているとは思うが。
切実に、そうであって欲しい。
「まぁ最悪投函されたとしても、一、二回くらいは『書類に不備あり』で送り返せば良いんですよ。そうこうしてるうちに、冷静にもなるでしょ」
…お前って奴は。
思慮深いんだか、楽観的なんだか、どっちだよ。
「強いて言うなら、どっちもですね」
心を読むな。
「それに、退学届を渡すとき、ちゃんと彼女の痛いところに、釘を差しておきましたし。余計、退学届には手を出しにくいんじゃないですか?」
「…釘…?」
って、お前何処に差したの?
そういや、退学届を手渡すとき、随分意味深なこと言ってたけど…。
あれと何か関係が?
「あー、あれですね。彼女の中で、走馬灯みたいなものが流れてたんですよ」
いち早く俺の心を読んだナジュが、そう説明した。
何だ?エヴェリナの走馬灯って。
「どうも彼女、幼い頃から魔導師に憧れていたそうですね。母親が魔導師排斥論者なのは知っていたものの、彼女の伯母…父親の姉が、魔導師だったそうで」
あ、そうなの?
成程、父親が妙に日和見だったのは、自分の姉が他ならぬ、魔導師だったからか。
となると、エヴェリナの魔導適性は、父方の家系から引き継いだのかもな。
「その伯母に憧れて、魔導師を目指し…。で、彼女が小学校高学年のとき、どうもイーニシュフェルト魔導学院のオープンスクールに参加したそうです」
「オープンスクールに…」
大抵何処の魔導師養成校でも、毎年行われているものだが。
当然、我がイーニシュフェルト魔導学院でも開催している。
今年も、丁度近々行われる予定だ。
「そのとき、僕はまだいなかったから、よく知りませんが…体験授業?みたいなのを、行ったそうですね」
「あぁ…。うちでは、毎年やってるよ」
「それに参加して、感動したみたいですよ」
そうなのか。
「授業を担当したのは、学院長だったそうですね」
「そうだな。大抵シルナがやってるよ」
書類仕事は、面倒臭がるシルナだが。
オープンスクールの体験授業なんて、シルナにとっては大好物だ。
まずは手始めとばかりに、参加者全員にチョコレートを配り。
未来の自分の生徒〜♪とばかりに、毎年うっきうきで授業を行っている。
想像つくだろ?
「…悪かったよ、責めるようなこと言って…」
ナジュには、ナジュなりの考えがあったんだ。
その上で、最善と思われる行動をしたのだ。
それを責めたのは、俺が悪かった。
「別に良いですよ。大体、あれだけ『退学届寄越せ!』って言ってた母親だって、僕が本当に退学届渡したとき、内心ちょっとびっくりしてましたし」
マジで?
あれだけ退学退学言っといて?
まさか、そんなにあっさり退学届をもらえるとは、思ってなかったのか。
「本物の退学届を見て、自分がやろうとしていることの現実が分かったんでしょう」
「そ、そうか…」
「本人は内心『退学したくない』の一点張り、父親は日和見、何なら母親もちょっと動揺してる。こんな状況じゃ、勢いに任せて退学届に記入したとしても、それを投函するまでには、何処かで踏み留まるでしょう」
…ナジュが心を読んで判断した読みだから、当たっているとは思うが。
切実に、そうであって欲しい。
「まぁ最悪投函されたとしても、一、二回くらいは『書類に不備あり』で送り返せば良いんですよ。そうこうしてるうちに、冷静にもなるでしょ」
…お前って奴は。
思慮深いんだか、楽観的なんだか、どっちだよ。
「強いて言うなら、どっちもですね」
心を読むな。
「それに、退学届を渡すとき、ちゃんと彼女の痛いところに、釘を差しておきましたし。余計、退学届には手を出しにくいんじゃないですか?」
「…釘…?」
って、お前何処に差したの?
そういや、退学届を手渡すとき、随分意味深なこと言ってたけど…。
あれと何か関係が?
「あー、あれですね。彼女の中で、走馬灯みたいなものが流れてたんですよ」
いち早く俺の心を読んだナジュが、そう説明した。
何だ?エヴェリナの走馬灯って。
「どうも彼女、幼い頃から魔導師に憧れていたそうですね。母親が魔導師排斥論者なのは知っていたものの、彼女の伯母…父親の姉が、魔導師だったそうで」
あ、そうなの?
成程、父親が妙に日和見だったのは、自分の姉が他ならぬ、魔導師だったからか。
となると、エヴェリナの魔導適性は、父方の家系から引き継いだのかもな。
「その伯母に憧れて、魔導師を目指し…。で、彼女が小学校高学年のとき、どうもイーニシュフェルト魔導学院のオープンスクールに参加したそうです」
「オープンスクールに…」
大抵何処の魔導師養成校でも、毎年行われているものだが。
当然、我がイーニシュフェルト魔導学院でも開催している。
今年も、丁度近々行われる予定だ。
「そのとき、僕はまだいなかったから、よく知りませんが…体験授業?みたいなのを、行ったそうですね」
「あぁ…。うちでは、毎年やってるよ」
「それに参加して、感動したみたいですよ」
そうなのか。
「授業を担当したのは、学院長だったそうですね」
「そうだな。大抵シルナがやってるよ」
書類仕事は、面倒臭がるシルナだが。
オープンスクールの体験授業なんて、シルナにとっては大好物だ。
まずは手始めとばかりに、参加者全員にチョコレートを配り。
未来の自分の生徒〜♪とばかりに、毎年うっきうきで授業を行っている。
想像つくだろ?


