オーネラント家を出てから。
「お前馬鹿かよ!?あんな状況で退学届なんか渡したら、速攻で書いて送ってくるに決まってるだろ!」
俺は、待ってましたとばかりにナジュを詰問した。
あれじゃあ、「もうさっさと退学してくれ」と言ってるようなものだ。
今頃エヴェリナは、母親のもとで、退学届に記入してるぞ。
父親は反対してたっぽいが、母親には頭が上がらないみたいだったし。
多分エヴェリナを止めもせず、おろおろ見てるだけだぞ。
エヴェリナを止める者が、誰もいなくなってしまった。
それなのに。
「えぇ。記入してるかもしれませんね」
この詐欺師、飄々として。
「さっきからあなた、僕を詐欺師詐欺師って…。失礼じゃありません?」
「詐欺師だからな!ってか、涼しい顔して言うなよ、お前はエヴェリナを退学させたいのか?」
お前も、イレースと同じ意見か。
するとナジュは、はぁ、と溜め息をついて言った。
「あのですねぇ、皆して頭に血が上っちゃって。少しは落ち着いてくださいよ。あの場にいた、ひ弱な父親と僕以外の全員、頭に血が上ってたんですよ。あれ以上僕達が首突っ込んでヒートアップして、冷静な判断が出来る訳ないでしょう?」
「うっ…」
「おまけに、本人まで出てきちゃって。あんな修羅場に発展したら、もう僕達の声なんか届きませんし、届いたとしても冷静に受け止めることなんて出来ません。余計判断を誤るだけです」
それは…。
…そうかもしれない。
魔導師排斥論者のエヴェリナ母なんか、余計に。
エヴェリナ本人だって、諍いを何とか収めたい一心で、半泣きで出てきたんだし…。
皆して、冷静さを欠いていた。
俺もだけど。
「あの状態で、どうやって説得するんです。無理ですよ。だったら一旦、望むように退学届を渡して、距離を取るしかない。今頃、少しは頭クールになってるでしょ」
ナジュの言い分は、もっともだ。
あんな修羅場状態じゃ、考えるものも考えられない。
「…でも…クールにならずに、勢いのままに、退学届に記入してるかもしれないんだぞ」
「してるかもしれませんね」
「出されたら終わりじゃないか」
「絶対とは言い切れませんが、きっとすぐには出しませんよ」
あ?
「何でそう言えるんだ?」
「彼女が、本当は退学なんかしたくないと思ってたからです」
「…」
…それって…。
「僕達に退学すると言ってたときも、『お母さんの怒りを鎮めるには、こうするしかない』という一心。退学届を受け取ったときなんて、心の中、『嫌だ』でいっぱいでしたから」
…そうか。
そうだよな。ナジュは、読心魔法が使えるから…。
あの修羅場の中で、ナジュはそれぞれの心の中を順繰りに覗きながら。
誰に何を言って何をすれば良いのか、的確に考えながら行動していたのだ。
「お前馬鹿かよ!?あんな状況で退学届なんか渡したら、速攻で書いて送ってくるに決まってるだろ!」
俺は、待ってましたとばかりにナジュを詰問した。
あれじゃあ、「もうさっさと退学してくれ」と言ってるようなものだ。
今頃エヴェリナは、母親のもとで、退学届に記入してるぞ。
父親は反対してたっぽいが、母親には頭が上がらないみたいだったし。
多分エヴェリナを止めもせず、おろおろ見てるだけだぞ。
エヴェリナを止める者が、誰もいなくなってしまった。
それなのに。
「えぇ。記入してるかもしれませんね」
この詐欺師、飄々として。
「さっきからあなた、僕を詐欺師詐欺師って…。失礼じゃありません?」
「詐欺師だからな!ってか、涼しい顔して言うなよ、お前はエヴェリナを退学させたいのか?」
お前も、イレースと同じ意見か。
するとナジュは、はぁ、と溜め息をついて言った。
「あのですねぇ、皆して頭に血が上っちゃって。少しは落ち着いてくださいよ。あの場にいた、ひ弱な父親と僕以外の全員、頭に血が上ってたんですよ。あれ以上僕達が首突っ込んでヒートアップして、冷静な判断が出来る訳ないでしょう?」
「うっ…」
「おまけに、本人まで出てきちゃって。あんな修羅場に発展したら、もう僕達の声なんか届きませんし、届いたとしても冷静に受け止めることなんて出来ません。余計判断を誤るだけです」
それは…。
…そうかもしれない。
魔導師排斥論者のエヴェリナ母なんか、余計に。
エヴェリナ本人だって、諍いを何とか収めたい一心で、半泣きで出てきたんだし…。
皆して、冷静さを欠いていた。
俺もだけど。
「あの状態で、どうやって説得するんです。無理ですよ。だったら一旦、望むように退学届を渡して、距離を取るしかない。今頃、少しは頭クールになってるでしょ」
ナジュの言い分は、もっともだ。
あんな修羅場状態じゃ、考えるものも考えられない。
「…でも…クールにならずに、勢いのままに、退学届に記入してるかもしれないんだぞ」
「してるかもしれませんね」
「出されたら終わりじゃないか」
「絶対とは言い切れませんが、きっとすぐには出しませんよ」
あ?
「何でそう言えるんだ?」
「彼女が、本当は退学なんかしたくないと思ってたからです」
「…」
…それって…。
「僕達に退学すると言ってたときも、『お母さんの怒りを鎮めるには、こうするしかない』という一心。退学届を受け取ったときなんて、心の中、『嫌だ』でいっぱいでしたから」
…そうか。
そうだよな。ナジュは、読心魔法が使えるから…。
あの修羅場の中で、ナジュはそれぞれの心の中を順繰りに覗きながら。
誰に何を言って何をすれば良いのか、的確に考えながら行動していたのだ。


