神殺しのクロノスタシスⅣ

すると、そこに。

「やっほー、来たよ〜」

間抜けな声がして、振り向くと。

イーニシュフェルト魔導学院の、シルナ・エインリーと羽久・グラスフィアの二人が、控え室にやって来た。

あぁ。来たのか。

ちなみにシルナ・エインリーは、今回花嫁の父親役として、ベリクリーデと一緒にヴァージンロードを歩くことになっている。

他に適任がいなかったもんで。

「うわっ、凄いイケメンがいると思ったら…ジュリス君じゃないか」

「そりゃどーも」

シルナ・エインリーは、びっくりしたようにこちらを見た。

何だ。

「凄いね〜。本当に、童話に出てくる王子様みたい…。こんな王子様が迎えに来てくれたら、お姫様も喜ぶだろうね」

「…って、おっさんに言われても嬉しくないよなぁ」

羽久・グラスフィアが、ぼそっと呟いていた。

まぁ、悪い気はしねぇよ。

「ジュリス君の準備は完璧だね。あとはベリクリーデちゃ、」

「やっほ〜」

シルナ・エインリーが顔を向けた先には。

ウェディングドレス姿のベリクリーデが、足をぷらぷらさせながら手を振っていた。

おい。折角ドレス着てんのに、足をぶらぶらさせるんじゃない。

お姫様には程遠い、お行儀の悪さ。

が。

「…ふぉぉぉ!凄い!ベリクリーデちゃんどうしたの!?」

ベリクリーデを見て、シルナ・エインリーが覚醒した。

「何が?」

「凄い可愛いじゃないか〜!美男美女!美男美女カップルだ!凄い!シュニィちゃんのときも凄く似合ってたけど、ベリクリーデちゃんも凄く似合ってる!」

語彙が貧弱だな。

「凄い」って、何回言ってんだ。

まぁ、ベリクリーデ、本当に似合ってるからな。

そう思うのも無理はない。

「凄いね〜…!いや、本当の結婚式じゃないと分かってはいるけど、でも、でも…!…ぐすっ」

え、ちょ。

嘘だろ?

「何泣いてんだ?お前…」

羽久・グラスフィアドン引き。

「いや、だって…!何だか嬉しくて…!大きく…二人共大きくなったねぇ…!」

「…」

…親戚のおじさんかよ。

あと、ごっこ遊びだからな、これ。感動されても困るんだが?