神殺しのクロノスタシスⅣ

と、俺はこんなに、悶絶しかねないほどの葛藤を抱えているというのに。

新婦のベリクリーデは、呑気なものだった。

「私結婚式初めてだ。楽しみ〜」とか抜かしてたからな。

何が楽しみだよ。

あいつ、結婚式の意味分かってるか?

楽しいお祭りじゃないんだぞ。

他でもない自分が、結婚式の当事者だって理解してるのか?

そりゃ、本物の結婚式じゃない。ただのごっこ遊びの範疇だ(にしては大掛かりだが)。

ようは、オレンジ小人を満足させられれば、それで良い。

って言うか、満足させられなかったら、俺もベリクリーデも死ぬんだよ。

惜しむ命ではないと思っていたけれど、あれは撤回する。

惜しむわ。

何でここまで長く生きてて、こんな下らないことで死ななきゃならないんだ。

「死因:結婚式」なんて、絶対嫌だからな。

冗談じゃない。

俺は絶対生き残る。結婚式に殺されて堪るか。

それに、俺だけが契約者ならまだしも、ベリクリーデにも茨の指輪は嵌められているのだ。

しくじったら、俺が死ぬだけでは済まない。

絶対にしくじれない。俺と、ベリクリーデが生き延びる為にも。

その為には、絶対にオレンジ小人を満足させなければならない。

今回しくじったら、期限内に次を開催する時間的余裕は、多分ない。

シュニィは万が一に備えて、二回目があったときに間に合うよう、手配を進めてくれているらしいが。

俺は一週間に二回も、命懸けの結婚式を開く趣味はない。

そんな背水の陣みたいな結婚式、誰が喜んでやるかよ。

あのオレンジ小人、「喜び」を知りたいとか言っていたが。

強制結婚に強制結婚式じゃあ、喜びも糞もないだろ。

等々、言ってやりたいことは山程あるものの。

そんなことをしている時間もなく。

「ジュリスさん、支度、終わりました?入っても良いですか?」

控え室で、鏡を睨みつけていた俺のもとに。

シュニィが、コンコンとノックしてきた。

「あぁ、どうぞ」

「失礼しますね」

この度の結婚式準備を、主導で進めてくれたシュニィは。

本日の招待客にもなっているので、今日はパーティドレス姿である。

やっぱりさぁ、お前とアトラスにやらせるべきだったよ、この契約。

そうしたら、誰もが幸せに、オレンジ小人を満足させられたものを。

「…あら…」

「…あ…?」

入ってきたシュニィは、何故か呆気に取られて、俺を見つめていた。

「何だよ、どうかしたか?」

「あ、いえ…。タキシード姿、お似合いですね」

やめてくれよ。