神殺しのクロノスタシスⅣ

「…小人、チェンジだ、チェンジ。別の人間にしろ」

苦し紛れに、ジュリスが必死の抵抗を見せる。

別の人間と言われても、別の人間に回されても困るだろ。

しかし。

「もう契約しちゃったから、無理だよ」

現実は非情である。

「それより良いの?急がなきゃ。七日後の期限は、もう始まってるんだよ?」

それどころか、脅しをかけてくる始末。

やっぱりムカつくわこの小人。

「僕の満足する結婚式じゃないと、その指輪は外さないからね。まずは二人共、白いタキシードに白いウェディングドレスで、大きなウェディングケーキを用意して〜」

そして、我儘を言い始める。

注文が多い。

「それから何と言っても、誓いの指輪!結婚式の醍醐味だよね〜」

うっとりと語るオレンジ小人。

「これぞ、『喜び』の真骨頂だ。結婚式以上の『喜び』なんて、他に存在しないからね!」

「…世界狭そうだね、この小人…」

「そりゃー、何万年も棺桶の中に閉じ込められてたら、そんな安直な考えになるのも当然じゃない?」

自分達はもう契約済みだからと、言いたい放題の元暗殺者組である。

確かに、結婚式だけが人生の喜びではないと、俺も思うけども。

メルヘン脳の小人には、そんな正論は通用しない。

「…悪夢だ…。悪夢…」

「じゅ、ジュリス君…。とりあえず、その…元気を出して」

ガックリと座り込んだままのジュリスに、シルナが声をかけた。

「気持ちは分かるけど、オレンジ小人の言う通り、もう七日間の期限は始まってるんだ。こうなった以上…やるしかない」

「…」

「本当の結婚式じゃないんだ。ただのパフォーマンスだと思って…何とか、お願い出来ないかな」

シルナ。

お前、丸め込むの上手いな。

「…分かったよ…」

諦めが早い、と言うか。

頭の切り替えが早いジュリスは、不満顔で、それでも頷いた。

床をぐりぐり殴ってたけど。

「どうせやらなきゃ殺されるんだ。他に選択肢はないだろ。…良いよ、ベリクリーデと結婚式、やれば良いんだろ」

…さすが。

腹を括ると強いよ、ジュリスは。

…で、一方の新婦、ベリクリーデは。

「結婚式って、そんなに楽しいものなんだ。じゃあ何回もやりたいね〜」

物凄く呑気だった。

そりゃまぁ、楽しいことなのかしれないが。

何回もやるものではないぞ、結婚式って。

新婦がこれでは、先が思いやられる…。