神殺しのクロノスタシスⅣ

聖魔騎士団から応援を呼んで、まさかすぐに応援メンバーが契約者に選ばれるとは。

しかも、また同時に二人。

それも今度の小人は、結婚式をやれ、と命令してきている。

かなりこまかい注文をつけて、だ。

そして契約者は、選択の自由もなく…勝手に選ばれてしまった。

ジュリスとベリクリーデの二人に。

そりゃ確かに、二人共お伽噺の王子と姫もかくやという美男美女ではあるが。

ついでに言うと、天音が女装して、男として色々大切なプライド的なものを失うよりは、マシなのかもしれないが。

だからって、結婚式という、人生において重大な意味を持つであろうイベントを、勝手に他人に決められてしまうのは。

…。

…黄色小人の分も、オレンジぶん殴って良いだろうか?

勝手が過ぎるぞ。

「君達は理想の美男美女カップルだ!さぁ、二人の結婚式を見せておくれ」

「ちょっと待てよ!お前、何を勝手に決めてるんだ」

ジュリス、当然のブチギレ。

「ふざけんなよ。誰が結婚式なんかするか!ベリクリーデ、お前も何とか言ってやれ!」

「見て見てジュリス。茨で出来た指輪だ。チクチクするのかと思ったら、意外と大丈夫だね。つけてないみたい」

「話を聞けよ!」

ベリクリーデ、茨の指輪に夢中。

お前それ、七日後に自分を殺す指輪なんだぞ。分かってるか?

多分分かってない。

「お前、頼むから、今だけはまともになれ。まともになってくれよ」

「私は、いつもまともだよ?」

「何処が?良いか、俺達はこのままじゃ、この腹立つ小人の言うがままに、結婚式をやらされるんだぞ?」

「結婚式?誰が?」

「俺とお前だよ」

ジュリスが、迫真に迫った顔で訴えて、初めて。

自分の身に何が起きているのか、ようやく理解したようで。

「…」

と、ちょっと無言になったベリクリーデだが。

「…結婚式かぁ。初めてだな〜。楽しみだ」

ベリクリーデのこの言葉に、ジュリスは力なくその場に崩れ落ちた。

…ジュリス…。

今ばかりは、お前に全力同情するよ。

「惜しかったですね…。天音さんを合法的に女装させられるチャンスだったのに…」

「…そんなチャンスは、もう二度と、永遠に来なくて良いよ…」

ナジュの呟きに、天音が九死に一生を得たみたいな声で返事をした。

天音は救われたが、その代わりにジュリスという犠牲者が出た。

「くそ…。こんなことになるなら、シュニィとアトラスを止めるんじゃなかった…」

悔しげに言うジュリスである。

あ、確かに。 

あの二人なら、既に夫婦だし、言うまでもなくラブラブだし。

もう一回結婚式やってくれと言われても、喜んで…いや、シュニィは恥ずかしがるだろうけど…少なくとも、アトラスは乗り気だったろうな。

…惜しい人を置いてきてしまったものだよ。

でもまさか、こんなお題を出されるなんて、夢にも思わなかったから…。