神殺しのクロノスタシスⅣ

これは、一体何事だ。

…とりあえず。

「…おいナジュ!天音をいじめんな!」

半泣きになってるだろうが。天音が。

「ちょ、言いがかりはよしてくださいよ。僕は天音さんをいじめてなんかいません」

めちゃくちゃいじめてたじゃないか。さっき。

「違いますよ。これには深い事情が…」

「何だよ深い事情って。天音をいじめるのに、何の事情が…」

…と、思ってナジュの方をよく見ると。

とんでもないものが、そこにいた。

…小人だ。

オレンジ色の服を着た、新しい小人が出てきている。

い、いつの間に…!

「つい30分ほど前に、棺桶から出てきたんです。僕と天音さんで、その相手をしてたんですよ」

そ、そういうことだったのか。

「契約は!?もうしたのか?」

「まだです。何とか引き伸ばしてるところです」

それは良かった。

危ないところだった…。

と、思ったが。

「…なんか、違うんだよなぁ…」

オレンジ小人は、何故か白けた顔で、ナジュと天音をしれーっと眺めていた。

な、何だよこの小人。

黒と黄色は、嬉々として契約を申し出ていたのに。

このオレンジ小人は、白けた様子。

何て言うか…。あまり、乗り気じゃない…?

「違いませんよ。行けますって、大丈夫ですよ。天音さんがバッチリ女装してみせますから」

!?

い、今…何て?

「無理無理!無理だって女装なんて!そんなの無理っ!」

天音が、半泣きで全力拒否。

何が無理なんだと思っていたが…まさか…。

…女装のこと…?

「…そりゃ無理だろ!俺だって嫌だわ!」

ナジュの奴、やっぱり天音をいじめてたんじゃないか。

まさか、あろうことか天音に女装を迫っていたとは。

パワハラに値する。

「だ、だよね。だよね!?無理だよね!?」

「あぁ、無理だ」

地獄に仏みたいな顔で、天音は俺を見ていた。

しかし、ナジュは。

「そんなこと言っても、他に選択肢がないんだから、しょうがないじゃないですか」

何が?

「天音さんが女装して新婦の役を、僕が新郎役をして、結婚式を行う。生徒を巻き込まない為には、これしかないんですよ!」

「う、うぅ。だけど、それは分かってるけど、でもやっぱり無理だよ僕には!」

…えぇっと。

…これ、一体何の話?