神殺しのクロノスタシスⅣ

「え…何でですか?」

「何でじゃねぇ。お前らには子供がいるだろ。お前らに何かあったら、残された子供はどうなるんだ」

…言われてみれば、その通りだ。

そうだな。ジュリスの言い分が正しい。

「それは…でも…」

「良いから、お前らは残っとけ。聖魔騎士団を束ねるお前らは、残ってなきゃ駄目だ」

「そうだね、シュニィちゃん。アトラス君。聖魔騎士団の為にも、何よりアイナちゃんとレグルス君の為にも、二人は残った方が良い」

ジュリスに加えてシルナも、シュニィとアトラスに残留を促す。

うん。俺もその方が良いと思う。

最悪俺は、死んでも自分の命を失うだけで済むが。

この二人の場合、まだ小さい子供がいるんだ。

アイナとレグルスには、両親が必要だ。

「…済みません…」

「…面目ない。後のことは頼む」

僅かに思案した後、シュニィもアトラスも渋々ながらに頷いた。

あぁ、その方が良い。

「でも、皆さん…どうかご無事で」

「心配しないでください。必ず戻りますから」

「えぇ。白雪姫だか何だか知りませんが…恐れるに足りません」

エリュティアもクュルナも、頼もしい限りだ。

そして。

「よし、頑張ろうジュリス」

「…頑張ろうってお前…。そういや、お前も死んだら困るんじゃないか?神の器的に…」

意気込むベリクリーデに、ジュリスが思い出したかのようにそう言った。

…そういえば…。

「何で?」

「いや、何でって…。だから、お前にもしものことがあったら、神の器がさ…。いやまぁ、そんなこと言ってたら、どんどん人員が減るからアレなんだけど…」

「…?」

ジュリス。

多分ベリクリーデ、分かってないぞ。

めちゃくちゃきょとんとしてる。

「それに、お前は感情を教える側じゃなくて、むしろ教えられる側だろ」

ジュリスよ、それを言っちゃったら…終わりだろ。

それはそうかもしれないけども。

「何で?」

「いや、だから何でって言われてもさ…」

「でも、ジュリスは何処か行くんでしょ?」

「何処かって、イーニシュフェルト魔導学院な。『白雪姫と七人の小人』の契約者になりに行くんだよ」

「白雪姫?わー、何だか面白そう」

やっぱり分かってないんじゃないか?

字面のメルヘンさに騙されてる。

「楽しそうだから、私も行くよ」

「楽しくはねぇよ」

「そうなの?でも、ジュリスも行くんでしょ?」

「俺は行くよ。別に失うものはないからな」

「じゃあ、私も行くよ」

「…何が『じゃあ』なんだよ…」

…苦労してんな、ジュリス。

まぁでも、ベリクリーデの気持ちも分かる。

俺だって、シルナが行くところなら、そこがメルヘンだろうと地獄だろうと、何処でもついていくからな。