茨の指輪が、二人の指から消えるなり。

「良かったぁぁぁ、二人共〜っ!!」

シルナが、令月とすぐりに飛びついた。

おっさんに抱きつかれんの、すげー嫌だろうなぁ。

「羽久が私に失礼なことを考えてる気がするけど、今は嬉しいから別に良いや!」

あっそ。

「二人共…大きくなったね…!成長したね…!」

親戚のおっさんかよ。

まぁ、シルナの言いたいことは分かる。

本当成長したよなぁ。特にすぐり。

一昔前の、絶対令月許さないマンだった頃のすぐりを思えば、物凄い成長だ。

そう思うと、涙ぐましくなるのも分かる。

「ね?大丈夫だって言ったでしょう?」

と、余裕の表情でぱちんとウインクするナジュである。

全くだよ。心配して損した。

まさか、こんなに二人が成長しているとはな。

「大袈裟だなー。ねー『八千代』」

「うん」

大袈裟じゃないんだよ。俺達からしたらな。

「ってか『八千代』さー、小っ恥ずかしくなるようなこと言わないでくれる?」

「僕、何か言ったっけ?」

「言ってたじゃん。自分にないものを持ってるとか何とか…」

「そうだっけ?僕、思ったことしか言ってないよ」

「あー、はいはい。鳥頭鳥頭〜」

「鳥頭…。…こけこっこ?」

平和で何より。

「ひ、ひとまずこれで…二人分の試練が終わったことになるね」

と、天音。

そうだな。

あと五人分、残っていることに変わりはないが。

ひとまず、初動はこちらの勝ち、と言ったところか。

「次が出てくるまでのインターバルが、どれくらいあるのか分かりませんが…。聖魔騎士団に協力を要請するなら、急いだ方が良いですね」

イレースが言った。

そうだな。

協力を要請すると言っても、やはり、命が懸かっていることだから…慎重に話さなければなるまい。

その為には…。

「…シルナ。ここはやっぱり、俺達で話しに行こう」

頭を下げて、協力してもらわなければならない。

ならば、学院の代表であるシルナと…その相棒である俺が行くのが、道理というものだろう。

「それまで、この白雪姫は…ナジュ、それに天音。見ててもらえるか?」

「はいはい、了解です。もし小人が出てきたら、僕達で契約しちゃいますね」

おい、早まるな。

「だって、もうイレースさんも、令月さん達も契約済みですし…」

「それはそうだけど…。出来るだけ時間を稼げ」

「努力はします」

頼れるんだか、頼れないんだか。

「安心して行ってきて。大丈夫、僕達で監視しておくから」

天音がこう言ってくれるから、かろうじて安心出来る。

まぁ、何にせよ。

「急ぐぞ、シルナ。聖魔騎士団に…」

「…」

「…?おい、シルナ?」

何故か。

シルナが、真顔で白雪姫を見つめていた。