「色んな魔法が使えることだけが、『八千歳』の長所だと思ってるなら、浅はかだね」

浅はかだと言われた黄色小人、何も言い返せない。

ざまぁ。

「僕はずっと『八千歳』が羨ましいし、それはお互い様なんだよ。こんな付け焼き刃みたいな…つまらないモノをいくらもらったって、少しも満たされない」

「う…うぅ…」

一歩、ニ歩、と後ずさる黄色小人。

…見たか。

この二人の、この成長を。

教師としては、涙ぐましいものがある。

「俺の…俺達の感情は、もう嫉妬じゃない。俺達が教えられるのはそれだけだね〜」

「満足した?」

「…」

ぐうの音も出ない、黄色小人。

これでは、「嫉妬」を教えたことにはならないように思われるが。

しかし黄色小人の小瓶は、ちゃんと黄色い液体で満たされていた。

令月とすぐりが互いに感じている感情。

嫉妬ではなく、互いへの憧れと尊敬。

その感情が、小瓶をいっぱいに満たしているのだ。

だから。

「分かったよ…。これが…君達の『嫉妬』なんだね」

小人は、観念したように肩を落とした。

「確かに、僕の考える『嫉妬』とは違っていた。でも、確かに…僕は君達の『嫉妬』を教えてもらった」

ご覧の通り、小瓶もいっぱいになってるしな。

これが、何よりの証拠だ。

「君達の『嫉妬』…確かに学んだよ。これで僕の役目は終わりだ」

そう言うなり。

令月とすぐりの指に嵌っていた、茨の指輪が消えた。

同時に、黄色小人もまた、棺桶の中に消えてしまった。

…黒小人に比べたら、多少聞き分けは良かったな。

終わった。

二人共無事に『白雪姫と七人の小人』の試練を、乗り越えたのだ。

しかも、こんなに感動的な形で。

二人が無事で何より…だが。

「…くそ。殴り損ねた…」

それだけが、口惜しかった。