神殺しのクロノスタシスⅣ

しかし、それすらも小人は、すぐりを攻撃する口実にする。

「惨めだね〜すぐり君。お優しい先生達が、一生懸命君を慰めてくれてるよ」

はぁ!?

そんなつもりで言ってんじゃねぇ。

「君が可哀想だから、あんな風に言ってくれてるんだよ。君の乏しい長所を少しでも漁って探して、必死に褒めてくれてるんだ。優しいね〜」

ちょっと、この茨どっかやれよ。

あいつぶん殴りたい。ぶん殴らないと気が済まない。

「ほらほら、嫉妬するよね?君の中にあるその感情…。ズルいよね、令月君だけズルい、ズルい。生まれながらに彼だけ恵まれてて、何でも持ってて羨ましい。その点君にはな〜んにもない。妬ましいよなぁ〜」

小瓶の中に、黄色い液体がどんどん溜まっていく。

こんな、下らない挑発で…。

好き勝手、人間様をおちょくりやがって。

やっぱり殴りたい。

「くそっ。こうなったら、この茨焼き尽くして…」

一発殴らないと気が済まない俺は、杖を取り出して、行く手を阻む茨を焼こうとした。

しかし。

「まぁ落ち着いてくださいよ、羽久さん」

ナジュが、そんな俺を制した。

はぁ?

「落ち着けって、落ち着けるか!あのクソ野郎、殴らなきゃ気が済まない!」

「短気ですね。でも、その必要はありませんよ」

は?

「必要ないって…。それはどういうこと?」

天音が、ナジュに尋ねる。

「見てれば分かりますよ」

ナジュは微笑んで、そう答えた。

「あの小人は、令月さんとすぐりさんを『嫉妬』の契約者に選ぶという…最も愚かな選択をしたんです。その代償が何か、見届けてやろうじゃないですか」

…ナジュ、お前。それって…。

「ふふっ」

外野が静かになるのを見て、小人が調子に乗った笑みを浮かべた。

この笑い方。

童話に出てくる、白雪姫と七人の小人じゃねぇよ。

もう白雪姫、完全に嫌いになった。黒と黄色の小人のせいで。

「先生達も静かになったよ。やっぱり君が役立ずだってさ」

おい。そんなこと一言も言ってねぇ。

「妬ましいね〜、妬ましいよね〜。嫉妬するよね、何でも持ってて羨ましいよね」

「…」

「ねぇ、今どんな気持ち?言葉にして聞かせてよ。ねぇねぇ。どんな気持ちなの?今」

やめろよ。

煽るの天才か。

すぐり、頼むから…こんな分かりやすい挑発に乗るなよ…!

と、心の中で祈った、そのとき。

「今?そうだな…。君が馬鹿だな〜と思ってるよ」

すぐりが、にこりと笑顔で答えた。

…え?