神殺しのクロノスタシスⅣ

こ、いつ…。

「さぁ、令月君。他には何が欲しいかな?魔力もいくらでもあげるよ。すぐり君に劣るところは何もない」

にこにこと、令月を接待したその口で。

「対する君…すぐり君は本当駄目だな〜。唯一、色んな魔法が使えることだけが君の取り柄だったのに。今となっては、それも全く無用の長物になったね!」

平気な顔で、すぐりを貶す。

しかも、それだけではない。

「これじゃあ…えぇと、何だっけ。そう…『頭領様』にも捨てられて当然だね」

「…!」

その言葉に、令月もすぐりも、ハッとした。

俺達もそうだ。

こいつ、頭の中を覗いたときに…そんなことまで…。

そして、この二人のコンプレックスを刺激するには、それが一番…一番、効果的だ。

「『頭領様』も、すぐり君には幻滅してるだろうねー。こうなったら、君に良いところなんて一つもないもんね!ただの有象無象。褒めるところなんて何もない」

…。

「それに比べて令月君は凄いなぁ〜。今やどんな魔法でも使えて…。あ、でも?魔法が使えなかった頃から、その欠点を差し置いても、令月君の方がすぐり君より上だったんだっけ?」

…。

「ぷふふっ。これで完全に優劣がついたね〜。もう何の言い訳も出来ない。満場一致で、令月君の方が優秀だと証明されたね!」

…。

「ねぇ、今どんな気持ち?ねぇねぇ。自分が劣ってないっていう、たった一つの長所まで無意味になって、君の存在価値が全否定された訳だけど、今どんな気持ちなのかな?」

…。

「羨ましいよね〜。妬ましいよね〜。令月君は何でも持ってるのに、君はな〜んにも持ってない。ぷぷっ。みすぼらしいね〜」

…。

…こいつ。

さっきから、好き勝手言わせておけば…。

「お前、いい加減に…!」

もう、誰が止めても止まってやらない。

このムカつく小人をぶん殴らないことには、気が済まない。

俺が一歩前に出ようとしたら、その挙動に気づいた小人が、せせら笑うように言った。

「おっと、外野に手出しはさせないよ」

「っ…!?」

茨が蔓のように生えて、俺の行く手を阻んだ。

くそっ…。

「すぐり…!お前分かってるだろうな!?こんなクソ野郎の言うことを、真に受けるなよ!」

せめてもの抵抗に、俺はすぐりにそう叫んだ。

「そうだよ!こんな言葉に騙されないで。君には君の良さがあるんだ。令月君と比べることなんかない!」

シルナも俺と同様に、すぐりに向かって叫ぶ。

その通りだ。

こんな分かりやすい挑発に乗ったら、それこそ小人の思うがままだ。