神殺しのクロノスタシスⅣ

「…こんな札束もらっても、全然嬉しくない」

万札の山を前にしているのに、令月はつまらなさそうな顔だった。

山のような現金を前に、こう言ってのけるのだから…無欲と言うか、何と言うか…。

ただ、お金の価値が分かっていないだけなんだろうけど。

「こんなんじゃあ、俺は嫉妬しないな〜」

すぐりも、この余裕の表情。

お前達はそうだろうな。

「…お金は効果がない?それなら…」

すると、今度は。

令月の前に、大量の宝石の山が、ドン、と現れた。

眩しっ。

「ほらご覧、素敵な宝石だろう?」

「…」

令月は、突然目の前に現れた、大量の貴金属にきょとん。

ゴールドやシルバー、プラチナのネックレス、ブレスレット、アンクレットその他。

大粒のダイヤモンドがついた指輪や、ルビーやサファイアをあしらったネックレス、真珠のイヤリングもある。

成金かよ。

令月は、ジャラジャラと宝石のついたネックレスや指輪を、ぽやんと眺めていた。

これが何になるんだろう、とか思ってそう。

しかし、黄色小人はそんなことにも気づかず。

「はい、君にはこっち」

そう言って、すぐりの前に出したのは。

…おはじき、一枚。

…何でそうなった?

「どう?羨ましいでしょ?あの子は宝石、君にはそんなつまらない玩具。嫉妬するよね。妬ましいよね?」

「…はいナジュせんせー、パース」

「はーい」

すぐりは小人を無視して、おはじきをナジュに向かって指で弾く。

ナジュが、それを指でキャッチ。

遊んどる。普通に。

「すぐりさんって、おはじき知ってるんですね」

「これくらいなら、かろうじて実家にあったからね。たまに弾いて遊んでた」

おはじきで、ナジュとキャッチボールならぬ、キャッチおはじきやってる。

アイスホッケーみたいだな。

「…」

令月は、そんなすぐりとナジュをじっと見つめ。

「…僕もおはじきの方が良いなぁ」

と、ポツリと呟いた。

目が眩むばかりの宝石の山を前にして、おはじきの方を望むとは。

これじゃ、嫉妬してるのはどっちだか。

でも、確かにそうかもな。

宝石なんていくらあっても、令月にとっては楽しくもなんともないだろう。

それならむしろおはじきをもらって、誰かと遊んだ方がマシというものだ。