神殺しのクロノスタシスⅣ

テーブルいっぱいに並ぶ、お菓子の山。

俺には名前も分からない菓子もある。

これには、令月と言うより、

「ふわぁ〜っ!!羨ましいぃぃぃ!私!私もそれが良い!夢のヴィクトリアサンドイッチとクラフティもある!良いなぁぁ!あぁ私が嫉妬の契約者に立候補すれば良かったぁぁぁ」

シルナの方が歓喜していた。

「私が嫉妬してる!私が超嫉妬してるよ今!駄目?これ駄目!?」

「駄目だよ。君は契約者じゃないからね」

駄目だった。

残念だったな。

しかし、令月はと言うと。

「…僕、洋菓子より和菓子の方が好き」

と、いう我儘。

そういえばそうだったな。

一番好きなの…桜餅だっけ?

「そうなの?じゃあ用意してあげる」

玉手箱のように、今度は和菓子が山盛り、テーブルに並んだ。

令月の前には、洋食、和食、三大珍味、そして洋菓子と和菓子の、豪華ディナーが並んだ。

で、それが何って話だが…。

「あ、そうだ。君にはこれね」

そう言って、小人が振り返り。

すぐりの前に、ポン、とパンを出した。

皿にも乗ってない、カビが生えた、パサパサのパン。

…何でパン?

「君にはそれしかないから」

「はぁ…そーなの?」

「うん。…どう?嫉妬するでしょ?」

黄色小人がにやっと笑って、それでようやく、こいつのやろうとしていることの意図が分かった。

成程、そういうことかよ。

令月にだけ良いものをたくさん与えて、一方のすぐりには、最低限のものしか与えない。

最低限って言うか…食べたら危なそうなカビたパンだけど…。

なんという陰湿なことを、と思ったが。

「…もぐもぐ」

普通に食ってるぞ、すぐり。

おい、それカビてるから危ないって。

「もぐ。ごくん。霞かと思ったけど、普通に食べれるんだね〜、これ」

食べるなよ。

小人の方も、まさかすぐりが、マジで食べるとは思っていなかったらしく。

若干引き気味だった。

お前が与えたんだろうが。引くなよ。

一方、令月の方は。

「…色々出してもらって悪いけど、僕、これ要らない」

折角出した料理を、拒否。

あれだけ我儘言っといて、お前。

「何で?こんなに豪華で美味しそうなのに」

「それが何?要らないものは、要らないよ。学院長にあげる」

「えっ!やったぁ!」

シルナ歓喜。

しかし。

「…成程、食べ物には興味ないんだ。じゃあ良いや」

「あぁっ!」

小人は、大量に出した料理を一瞬で消してしまった。

シルナ、無念。

夢のヴィクトリアサンドイッチは、やっぱり夢だった。