神殺しのクロノスタシスⅣ

「…で、どうしたら良いの?」

このままでは、七日後に死ぬかもしれないというのに。

令月もすぐりも、やけに落ち着いていて、平常運転だった。

「僕はどうやったら、君に嫉妬心を教えたことになるの?」

「『八千代』に死ぬほど嫉妬すればいーの?それならすぐ出来るけど」

この辺りの落ち着き加減は、さすが死の修羅場を潜り抜けてきた数が違う、元暗殺者と言ったところだが…。

今回は、誰かを排除して問題が終わる訳ではない。

むしろ、もっと複雑で、しかも繊細だ。

「違うよ。君達はこれから、僕の用意する試練を受けてくれれば良いんだ」

おまけに、ルールを決めるのはこちらではない。

あくまで、この苛つく小人が定めた「設定」に、従わなければならない。

しかも…。

こちらの用意した試練…だと?

「さっきの『恐怖』は、どんな手段でも良いから恐怖を教えさえすれば良かったよね〜。でも僕は違うんだ。僕は、僕の思う『嫉妬』の感情が、本当に合っているのかどうかを確かめたい」

…。

「その為に、これから君達二人に、僕の用意する試練を受けてもらって、僕の想像している『嫉妬』が正しいのか、間違っているのかを判定する。さっきに比べたら、随分楽な試練だよね!」

自分で言うな。

ド畜生が。

「それって本当に楽なの?」

と、令月が聞いた。

「君の想像している嫉妬が、もし君の予想通りの嫉妬じゃなかったら、腹いせに『契約は解かない』とか言うんじゃないの?」

確かに。

この小人が、何を想像して、勝手に「嫉妬」だと思いこんでいるのか知らないが。

それが本当は嫉妬ではなかったとき、どうなる?

令月とすぐりが、自分の予想する嫉妬を演じるまで、契約は終わらないとか言い出すんじゃないだろうな?

しかし。

「それは心配要らないよ。正しくても間違ってても、僕が納得すれば、契約は解かれる」

…逆に言えば、お前が納得するまでは終わらないってことじゃないか。

やっぱりド畜生だ。

「まー、御託はいーよ。さっさと始めようよ」

すぐりが、どうでも良さそうに言った。

「うん、良い心意気だね!それじゃあ始めよう…。まず最初は、これだ!」

小人が、威勢良く開始を宣言すると同時に。

令月の前に、ポン、と音を立てて。




…ほかほか湯気を立てる、分厚いステーキが現れた。

…は?