神殺しのクロノスタシスⅣ

おまっ…!

「馬鹿言うんじゃない、すぐり」

「『八千歳』がやるなら、僕もやるよ。嫉妬心なら、『八千歳』にも負けないくらい自信あるし」

「令月まで…!」

お前ら何言ってんだ。

「馬鹿かお前ら!こんなことに、生徒を巻き込む訳ないだろ」

「え〜?でも嫉妬なんて、俺以上の適任いるの?」

適任がいるとか、そういう問題じゃない。

「そうだよ、すぐり君。命が懸かってるんだよ、これは。イレースちゃんのときは、有無を言わさず契約者にされちゃったから、どうしようもなかったけど…今回は、契約者をこっちで選べるんだ」

シルナも、慌てて二人を止めていた。

当たり前だ。

「私達だけじゃ対応しきれない。こうなったら、聖魔騎士団にも声をかけよう。君達生徒じゃなくて、もっと適任を探すんだ」

聖魔騎士団?

頼りたくなるのは分かるが…。

「聖魔騎士団を呼ぶ必要がありますか?我々教員が、順番に契約すれば…」

「イレースちゃん、それは…」

俺が言いたかったことを、イレースが代わりに言おうとした。

そのとき。

黄色い小人から、しゅるしゅると茨が伸び。

あろうことか、令月とすぐり、二人の指に巻き付いた。

こ、の…!!

クソ小人!

「お前、何しやがる!まだ契約者は決まってないだろ!」

慌てて小人を怒鳴りつけるも、こうなっては後の祭り。

「この二人が立候補したんだから、別に良いでしょ?」

良い訳ないだろ。何言ってんだ。

「それに、一度契約者になった者は、二度と契約者には選ばれないよ」

と、とんでもない後出しを披露。

何…!?

「同じ人間に感情を教えてもらったら、偏ってしまうじゃないか。僕達は、色んな人に色んな感情を教えて欲しいんだよ」

こ、この…屁理屈ばっかりこねやがって。

シルナが聖魔騎士団に声をかけると言ったのは、それが理由か。

教員達の中で、交代交代契約を回すことは出来ないから。

つまり現時点で、イレースは、二度と小人の契約を受けることは出来ないのだ。

そういう重要なことは…もっと先に言え。

お陰で、二人目の小人の契約者が、勝手に決められてしまった。

「君達二人が教えてよ。僕に、『嫉妬』の感情を」

令月と、すぐりが。

七日後に迫る、死の宣告を受けた。