…一つ言っとくけどさ。
何となく分かってるとは思うけどさ。
この実技授業って、はったりだから。
マジでファラリスしてる訳でも、マジでメイデンしてる訳でもないから。
雄牛を燃やしているあの炎は、シルナが幻覚魔法を使って、燃えているように見せているだけ。
アイアン・メイデンの内側に仕込まれたトゲも、実はシリコン製なので、身体に当たってもふにゃっ、と曲がるだけ。
だから、中で呻き声をあげている二人は、役者さながら、苦しんでいる声を絞り出しているだけだ。
天音もすぐりも、そうと分かってて合わせてるの。
これがド素人の呻き声だったら、バレるだろうけど。
二人共、声優になれそうなくらい上手いので。
今のところ全然疑われていない。
小人はがくがく震えながら、小瓶の恐怖ゲージを増やしていた。
そろそろいっぱいになりそうで、一安心。
「では…残りの皆さんには、これから画用紙を配ります」
来た。
イレース、鬼教官の最骨頂。
「が、画用紙…ですか?」
「えぇ。残りの皆さんには、この拷問の様子をスケッチしてもらいます。全員がちゃんと描き終えるまで…拷問を終わらせることは出来ませんから。精々、急いで描くことですね」
はったりだと分かっていても、やっぱり鬼教官は鬼教官だわ。
この間ずっと、喉痛くなりそうな声を出し続けなければならない、演技してる二人が気の毒。
しかも。
「まずは正面から、次に左右それぞれ、計三枚描いてもらうので宜しくお願いします」
そんなじっくりスケッチするものではない。
「あ…あの…」
ここで。
ようやく恐れを成したか、小人がそろそろと口を開けた。
「何です?」
「こ、これが恐怖だね?分かったよ…。き、今日はここまでにしようよ」
ほう?
このままでは瓶がいっぱいになると判断したのか、この場での一時撤退を申し出た。
しかし、そんな甘い考えが、鬼教官に通用するはずがない。
返ってきた返事は、イレースのビンタであった。
思いっきり張り飛ばした挙げ句、小人の胸ぐらを掴み上げる。
「何を言ってるんです…?授業はまだ終わってないんですよ?最後まで受けてもらわないと困りますね」
「ひ、ひぃぃ…」
ここで、小瓶恐怖ゲージがマックスに達した。
よし、来た。勝った。
イレースの指に嵌められていた茨の指輪が、するすると音を立てて、霧のように消えた。
…が。
「スケッチが終わったら、今度は拷問役の交代です。一人ずつ、二つの拷問具に耐えてもらいますからね…。勿論、あなたもです」
「ひ、ひぃぃぃ」
「ひぃじゃないんですよ。恐怖を知りたいんでしょう?…教えてあげますよ。この私に、舐めた口を利いた代償が何か。痛みを以て、よく学習すると良いでしょう」
…あの、イレースさん?
ノリノリなところ悪いんだけど、もう終わりです。
何となく分かってるとは思うけどさ。
この実技授業って、はったりだから。
マジでファラリスしてる訳でも、マジでメイデンしてる訳でもないから。
雄牛を燃やしているあの炎は、シルナが幻覚魔法を使って、燃えているように見せているだけ。
アイアン・メイデンの内側に仕込まれたトゲも、実はシリコン製なので、身体に当たってもふにゃっ、と曲がるだけ。
だから、中で呻き声をあげている二人は、役者さながら、苦しんでいる声を絞り出しているだけだ。
天音もすぐりも、そうと分かってて合わせてるの。
これがド素人の呻き声だったら、バレるだろうけど。
二人共、声優になれそうなくらい上手いので。
今のところ全然疑われていない。
小人はがくがく震えながら、小瓶の恐怖ゲージを増やしていた。
そろそろいっぱいになりそうで、一安心。
「では…残りの皆さんには、これから画用紙を配ります」
来た。
イレース、鬼教官の最骨頂。
「が、画用紙…ですか?」
「えぇ。残りの皆さんには、この拷問の様子をスケッチしてもらいます。全員がちゃんと描き終えるまで…拷問を終わらせることは出来ませんから。精々、急いで描くことですね」
はったりだと分かっていても、やっぱり鬼教官は鬼教官だわ。
この間ずっと、喉痛くなりそうな声を出し続けなければならない、演技してる二人が気の毒。
しかも。
「まずは正面から、次に左右それぞれ、計三枚描いてもらうので宜しくお願いします」
そんなじっくりスケッチするものではない。
「あ…あの…」
ここで。
ようやく恐れを成したか、小人がそろそろと口を開けた。
「何です?」
「こ、これが恐怖だね?分かったよ…。き、今日はここまでにしようよ」
ほう?
このままでは瓶がいっぱいになると判断したのか、この場での一時撤退を申し出た。
しかし、そんな甘い考えが、鬼教官に通用するはずがない。
返ってきた返事は、イレースのビンタであった。
思いっきり張り飛ばした挙げ句、小人の胸ぐらを掴み上げる。
「何を言ってるんです…?授業はまだ終わってないんですよ?最後まで受けてもらわないと困りますね」
「ひ、ひぃぃ…」
ここで、小瓶恐怖ゲージがマックスに達した。
よし、来た。勝った。
イレースの指に嵌められていた茨の指輪が、するすると音を立てて、霧のように消えた。
…が。
「スケッチが終わったら、今度は拷問役の交代です。一人ずつ、二つの拷問具に耐えてもらいますからね…。勿論、あなたもです」
「ひ、ひぃぃぃ」
「ひぃじゃないんですよ。恐怖を知りたいんでしょう?…教えてあげますよ。この私に、舐めた口を利いた代償が何か。痛みを以て、よく学習すると良いでしょう」
…あの、イレースさん?
ノリノリなところ悪いんだけど、もう終わりです。


