神殺しのクロノスタシスⅣ

「これより、ファラリスの雄牛の実技を行います。被験者、こちらに」

「宜しくお願いします!」

ナジュが、何故か嬉々として皆の前に出た。

ドMか。

お前今から、ついにファラリスされるんだぞ。分かってるか?

どうせ死なないから、ナジュにとっては怖いもの見たさの、ジェットコースター感覚なのかもしれない。

小人は、「え?本当にやるの?」みたいな顔で、愕然としている。

もっと恐怖を煽れ。

「では中に」

「行ってきまーす」

やっぱりジェットコースター感覚か。

ナジュは何の躊躇いもなく、ファラリスの雄牛の中にすっぽりと収まった。

そこをイレースが蓋をして、ガチャガチャと硬い錠を嵌める。

これで、もう内側からは出られない。

「うわー、狭い。狭くて暗い。圧迫感ヤバくて潰れそうなんですけど」

雄牛の中から、くぐもった声がする。

しかし、イレースは躊躇わない。

「では、点火の儀式を…。学院長、お願いします」

「あわわ。あわあわ…」

「学院長!!」

「ひぃっ!は、はい!今行きます!行きまーす!」 

シルナ、ぼやぼやしてたら、お前もファラリスの雄牛の餌食にされるぞ。

慌てて、教室の前に出るシルナ。

「それでは始めます。点火してください」

マッチ箱を手渡し、無情に死刑執行を促すイレース。

「ほ、本当にやるのか…?まさか、はったりだよ…」

小人が、ボソボソと呟いていた。

強がっているようだが、俺には見えてるぞ。

お前の小瓶が、みるみる黒い液体で満たされているのを。

はったりかどうか、その目で確かめてみると良い。

「じゃあ…じゃあやるね!ナジュ君、ごめん!」

シルナは、意を決してマッチで日をつけた。

点火。

めらめらじりじりと、雄牛の腹の下が燃え始めた。

やべーよこれ。

傍から見たら、相当ヤバいことしてると思うぞ。

生徒に見せたら、卒倒すること間違いなし。

俺でも気絶しそうだもん。

天音もビビって震えてるし。

令月とすぐりは、興味津々みたいな顔してるけど。