神殺しのクロノスタシスⅣ

「宜しい。では、これら二つの拷問具の使い方を説明しなさい」

「分かりました。まず新入りの鉄の処女ですが、これは見ての通り、両手を開いた空洞の中に、拷問を受ける者が入ります。そうすると、拷問官がゆっくり扉を閉めます。観音開きになった扉の両方に、内側にトゲがついているので、扉が閉まると同時に、そのトゲが身体にブスリと突き刺さることになります」

知ってる。

「完全にその扉が閉まったとき、拷問者は…」

そこで言葉を濁すんじゃない。

嫌な想像しか出来ないじゃないか。

「…宜しい。ではファラリスの雄牛は?」

「こちらは火責めの一種です。拷問者は、鉄で出来た牛の中に閉じ込められます。中から出ることは出来ません。その状態で、牛の足下に火をつけられます。するとフライパンさながら、拷問者は焼けた牛の中で、足元から炙られ、蒸し焼きにされることになります」

えげつねぇ。えげつねぇよ。

小人の恐怖ゲージが、凄い勢いで増えていく。

その調子。

「説明は以上ですか?」

「はい、以上です」

「あなたの説明では、不充分ですね」

ナジュは、こんなに完璧に回答したというのに。

イレース鬼教官は、不充分の判断。

「予習が甘い。この程度の知識…一年生で習う範囲でしょう!」

「申し訳ありません!!」

ごめん、それ何処の学校の話?

イーニシュフェルト魔導学院でないことは、確かだ。

我が学院では、こんな知識は一切教えていません。風評被害はやめてください。

「ファラリスの雄牛は、発案者が一番目の犠牲者である。この程度は常識です」

そうなんだ。

「では…そんな常識さえ説明出来なかったナジュさんが…実技授業の被験者になってもらうとしましょう」

「ありがとうございます!」

感謝することではねぇだろ。

ドMか。

お前、今からされることを分かってるのか? 

ここまでは、全て前哨戦だ。

ここからが、イレースの恐怖の授業の真骨頂。

そう、実技授業だ。

何事も、座学で学ぶより、実際に体験した方が分かりやすい。

と、いう訳で。

…実技授業だ。