「水牢は、溺れさせる為の拷問じゃないよ。やってみたら分かるんだけどねー…。一番辛いのは、体温の低下だね」

「…」

ポカーン顔の小人である。

大丈夫か?恐怖感じてるか?

「足首までしか浸からない浅い水でも、ずっと浸かってたら、段々体温が低下していく。冷蔵庫に入れられてるのと同じだね〜」

そんな、へらへらして言うことじゃねぇ。

想像しただけで、背筋がぞくっとしそうになる。

「そうなると面白いよ。少しでも水に浸からないように、カカシみたいに片足を上げてぶるぶる震えたり、逆立ちしてみたり…。でも、水の中から出られる瞬間は、一秒だってないんだ」

リアリティが増していく。

すぐりが臨場感ある話し方をするから、余計に。

小人の顔も、何となく青ざめている様子。

良いぞ、その調子だもっとやれ。

あと、決して面白くはないからな。すぐりよ。

「最終的には、結局どうすることも出来なくて、体温の低下のせいで水の中で意識を失う。そうなって初めて、水牢から出してもらう」

「それで終わりですか?」

「とんでもない!この拷問の恐ろしいところは、『繰り返す』ことだよ。一度水から出て、暖かい場所で体温を戻してから、また水牢に戻して1から拷問をやり直すんだ。そうなると…」

「そうなると、どうなるんです?」

「じわじわ時間をかけて死ぬほど寒くなる、体温が戻る、また寒くなる…。このループを繰り返すことで、拷問者は気が狂うんだよ。こうなってくると、コップいっぱいの水を見ただけでも気絶する」

…ぞくっ。

「他にも水を使った拷問には、腹がパンパンになるまで水を飲ませる水拷問とか、額にピンポイントで一滴ずつ水を垂らす拷問とか、色んな種類があるけど…。やっぱり、じわじわ体温を奪われるこの水牢は、格別だと思うね〜」

「そうですか。よく分かりました」

うん、よく分かったよ。

そんな拷問とは、絶対関わり合いにならない方が良いってことがな。