ここで、ちらっと小人を見てみる。

先程までの、舐めた態度は何処へやら。

余裕をなくしたように、しきりに目をきょろきょろさせている。

自分は何を聞かされているのか、何を見せられているのかと。

その気持ちはよく分かる。

が、お前が恐怖を知りたいと言ったから、こんな授業が始まってんだぞ。

よーく聞いとけ。

そして恐怖しろ。

我が学院のイレース・クローリア教師の、悪夢のような「授業」を。

「水牢とは、どんな拷問ですか?」

「『アメノミコト』で行われてた拷問だよ。鎖に繋いで、水の入った部屋に閉じ込める」

「成程…。では、そこで呆けてる小人!」

イレースが、バシィッ!!と教卓を叩いた。

シルナが、「ひぇっ!」とか叫んでいたが。

それは聞こえなかったことにして。

「あなたの為に授業してるんですよ?聞いてますね?」

「き、き、聞いてるよ…」

「聞いてるよ…?教師に向かってタメ口とは、どういう了見ですか!」

ビンタ、二発目。

椅子から吹っ飛ぶほどの威力。

小人は目を白黒させ、床に這いつくばっていた。

仕方ない。お前が仕掛けてきたんだから仕方ない。

同情はしないぞ。

「さっさと席につきなさい」

「は、は、はい…」

「声が小さい!」

「はいっ!」

さっきまでの、ムカつくにやにや顔も何処へやら。

小人は恐る恐るといった面持ちで、席に戻った。

「どうやらあなたは、授業中だというのに暇そうですね」

「え?」

「ではあなたに質問です。さっきすぐりさんの言った水牢、どんな拷問だと思うか、あなたの私見を述べなさい」

「し、私見?そんなの…」

「さっさと答える!」

教卓バシンッ!

「ひっ…。そ、その…水牢というからには…す、水槽みたいなものの中に閉じ込める、とか…」

「だ、そうですよすぐりさん。合ってますか?」

「あはは〜。全然駄目だね。大外れ」

「では、正解を教えて下さい」

俺もよく知らないし、やったこともやられたこともないけれど。

水牢って、確か…。

「水槽じゃないよ。牢獄の中に、足首くらいの水かさの水が入ってる。そこに閉じ込められるんだ」

…だよな?

「な、なんだ…。溺れるほどの深さじゃないなら、別に、大したこと…」

と、ようやく余裕の表情を、一瞬だけ取り戻す黒い小人だったが。

「ふっ。甘いなー」

拷問の知識については、ここにいる教員達の一歩上を行っているすぐり。

小人の浅知恵を、せせら笑った。