小人が去ったところで。

改めて。

「…どうするんだよ、これ…」

俺は、白雪姫が眠る白い棺桶を見下ろした。

とんでもないパンドラの箱を開けてしまったものだ。

「どうするもこうするも…開けてしまったからには、小人の要求に従うしかないんでしょう?」

「いや、それは…そうなのかもしれないけど…」

…でも、何とかならないだろうか?

だって、この『白雪姫と七人の小人』の提示するルールに、まともに付き合ってたら…。

…死ぬ、かもしれないんだろ?

「シルナ…。どうしても、何とかならないのか?」

何とかして、今からでも、この白雪姫を再び封印して…なかったことに出来ないものか。

それが出来れば、律儀にこいつのゲームに付き合ってやる必要はなくなる。

しかし。

「うん…。何とか出来たら良いんだけど…。一度発動してしまったら、白雪姫が目覚めるまで…収まらないと思う」

…付き合ってやるしかないと言うのか。どうしても。

「それどころか、私達が無視していたら…最悪周囲にいる人間を、見境なく契約者に選び始めるかもしれない」

「周囲にいる人間を…」

つまり、学院の中にいる生徒達にまで、手を出しかねないってことか。

そうなったら一巻の終わりだ。

「この手の魔法道具は…一度発動させたら、最後まで付き合うしかない。私達は…『白雪姫と七人の小人』のゲームに巻き込まれてしまったんだ」

…。

…最悪だな。

「まさか、賢者の石の封印が解かれたことで、こんなところにその影響が及ぶとは…」

「こんなタチの悪い、悪ふざけみたいな魔法道具、もっとちゃんと封印しておいて欲しかったですね」

天音とナジュが、それぞれ言った。

本当その通りだよな。

冗談じゃない。他にもこんな魔法道具が封印されてるってことなのか?

「耳が痛い…けど、封印の儀式が行われたのは、もう遥か昔のこと…。封印の効力そのものが、弱くなっているのかもしれない」

と、答えるシルナ。

封印って、そんな経年劣化するものなのか。

まぁ、いくら鍵付きの金庫に入れたって、金庫そのものが錆びて朽ちたんじゃ、意味がないもんな。

それと一緒か。
 
そして、賢者の石という大きな封印が解かれたことによって、壊れかけていた金庫の扉が、ついに決壊した…。

そのせいで、イーニシュフェルト魔導学院の敷地内に、こんな大昔の魔法道具が出現したのだ。