「綺麗な花には、棘もあるし、毒もあるんだよ」

おっさん小人は、へらへら笑いながらそう言った。

シルナに止められていなかったら、横っ面ぶん殴っていたところだ。

「…君達は…何が目的なの?」

シルナは、角が立たないよう、恐る恐る尋ねた。

すると小人共は、余裕の笑みで交互に答えた。

「僕達七人の小人は、白雪姫を目覚めさせることが目的なんだ」

「だけど白雪姫は空っぽで、今はまだ目覚めることが出来ない」

「白雪姫を目覚めさせるには、僕達が持つ、この小瓶をいっぱいにしなくちゃならない」

「白雪姫が目覚めるには、七つの感情が必要なんだ」

「君達には、その手伝いをしてもらうことになるよ」

やっぱりムカつくから殴りたい。

我慢だ俺。必死に我慢しろ。

何で上から目線なんだよ、こいつら。

「小人一人に付き、契約者は一人から二人」

「僕達に足りない感情を、その契約者達に教えてもらう」

「小人達それぞれのやり方でね」

「そうして小瓶が感情でいっぱいになったら、契約は解かれる」

「そうやって、七つの小瓶がいっぱいになったとき、白雪姫は目を覚ますんだ」

「…さっき君達、七日以内に達成出来なかったら、毒で死ぬとか言ってたけど…」

シルナが口を挟むと、小人共は、

「うん、死ぬよ」

「僕達に感情の一つも教えられないなら、死んだ方が良いしね」

相変わらず、クソ生意気に答えた。

なんてことを、へらへらしながら言いやがる。

何様だこの野郎。

「え…!じゃあ、それって…今、もう既に、イレースさんは契約してるんだよね?」

ぎよっとした天音が、青ざめて小人に尋ねた。

そうだ、イレースの指に嵌った、茨の指輪。

確か、あれが契約の証だとか何とか。

「そうだよ。その子は、白雪姫の棺桶の蓋を開けてくれたからね」

「一番に契約してあげたんだ」

「僕に恐怖の感情を教えてよ。七日以内にそれが出来ないと…君は死ぬよ」

唐突に、生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされ、愕然とする俺達とは裏腹に。

本人の望まぬまま、勝手に契約者にされたイレースは。

「成程。私はこれから、あなたの感情の小瓶とやらをいっぱいにして、契約を履行しなければならない。さもなくば死ね、ということですか」

「そうだよ。物分かりが良いね」

いや、ちょっと待てふざけんな。

発言には気をつけろ、と言われたが。

さすがにここいらが限界だった。