棺桶の中から、白いヒゲを生やしたおっさんみたいな…。

…黒い服を着た小人が、よっこいしょ、とばかりに棺桶から出てきた。

…何?この展開。

シルナみたいに、変な奇声は出なかったものの。

そろそろ俺の脳内も、キャパオーバーしそうなんだが?

「僕に感情を教えて、この瓶を満たしておくれよ。そうしたら、指輪を外してあげるよ」

俺達が呆然としている中、陽気に喋るおっさん小人。

…誰だ?お前。

まずそこから言えよ。

「…何者です?あなたは」

かろうじて、イレースが口を開いた。

良いぞイレース。良いことを聞いた。

すると。

「僕は小人さ。七人の小人のうち、『恐怖』の感情を集める小人だよ」

おっさん小人が、訳の分からん返事をした。

『恐怖』…?七人…?

首を捻っていると、シルナが突然。

「…あっ!!」

と、大声をあげた。

…何だ?

「うるさいぞ、シルナ…。どうしたんだよ」

俺は今、現状何が起きているのかを確認するのに精一杯なんだよ。

突然、棺桶からおっさんの姿の小人が出てきたと思ったら。

契約がどうとか感情がどうとか言い始めて、頭の中が大混乱。

「思い出した…。もしかしてこの棺桶…『白雪姫と七人の小人』じゃないかな!?」

…は?

シルナが、突然メルヘンなことを言い始めた。

ボケか?ボケが始まったのか、と思ったが。

このタイミングを考えると、多分認知症の症状ではないな。

むしろ、シルナがこの謎棺桶の正体について知っている、と考えるのが妥当だろう。

「シルナ、何なんだ?その白雪姫って…」

童話のアレだろ?よく子供の絵本になってる…。

それと、この謎棺桶と、何の関係が?

「賢者の石と同じく…イーニシュフェルトの里で作られた、魔法道具の一つだよ」

シルナの説明で、少しはこの棺桶について分かる、と思っていたのに。

むしろ、更なる混乱を招く結果となった。

これが…魔法道具?