事件…ではなさそうだから、ひとまず安心したものの。

出てきたブツが不可解過ぎて、これはこれで別の事件が勃発しそうな匂い。

「何でこんなものが…。シルナ、本当に見覚えはないのか?」

白状するなら今のうちだぞ。

いっそ、おっさんの隠れた趣味でも許容するから。

ドン引きはするけど。

「ほ、本当に知らないよ…。何でこんなものが、学院の敷地内に埋まってるの…?」

シルナは、マジで困惑していた。

何かを知っていて黙ってる、誤魔化してるという風には見えないな。

つまり、本当に知らないのだ。

「しかし、妙にリアルだよね…。今にも動き出しそうで…」

「ちょ、天音君怖いこと言わないで!」

「あ、済みません…」

こんなもん動き出したら、ガチホラーだよ。

でも、天音の言う通り。

見た目があまりにリアル過ぎて、本当に動き出しそうな気がする。

今にも、この閉ざされた瞼がパチッ、と開いて。

俺達を呪いそうな顔をしてるよ。

この人形、一体何処から来て、何で畑の下なんかに埋まってたんだ…?

誰の人形なんだろう。いつの時代の人形だ?

「棺桶に入っていたとはいえ、ずっと土の中に埋もれていた割には…汚れてもないし、欠けてもいないですね」

イレースが、躊躇いなく人形をベタベタ触っていた。

怖くないのか。怖くないよなイレースは。

「まるで、つい最近埋められたばかりのような…ん?」

ん?

イレースが途中で喋るのをやめ、ふと棺桶の中を見ると。

幼稚園児くらいの、小さな子供の手が。

ガッチリと、イレースの服の袖を掴んでいた。

これまた、一同言葉を失い。

そして。

「で…で、出たぁぁぁぁぁっ!!」

シルナが、叫び声をあげた。