神殺しのクロノスタシスⅣ

とりあえず、棺桶の土を払って、学院長室の床に置く。

部屋の中に、古ぼけた棺桶がある。

めちゃくちゃシュールな光景である。

シルナは全然知らないと言い張るし、何なら俺も全く見覚えがないし。

それでも、出てきたモノがモノだけに、捨てておけば良いや、とも言えず。

…とりあえず人員を増やそうと、イレースと天音を招集し。

ようやく、冒頭に至る。

…。

…これ、何?

改めて聞くけど、マジで何なんだ?

「シルナ、本当にこれ、見覚えないのか?」

「ない!ないないないよ!何なのこれ?怖い!」

シルナは、何も事情を知らないどころか。

ホラー的展開かと思い込んで、俺の背中に隠れている。

卑怯な奴だなお前は。

「やっぱり呪われたりするのかな?」

「それは大丈夫じゃない?呪われるとしても、多分ナジュせんせーだよ。さっき腰掛けにしてたし」

罰当たりな奴だなナジュは。

こいつ、「いつ死んでも良い」って考えが根底にあるせいで、呪われても良いと思ってるだろ。

いっそ呪われて、もっと長生きしろ。

「何だろう…?誰かの悪戯かな…。それにしてはタチが悪いよね…」

と呟く、保健室からわざわざやって来た天音。

悪戯…にしても、意味分からんよな。

何で棺桶?

「さっき運んでみたところ、結構軽いんですよね。中身入ってるんでしょうか?」

「空っぽだったらつまらないね」

「…むしろ、中身が入ってたときの方が怖いだろ…」

令月、お前「つまらないね」ってけろっと言うけど。

これが本物の棺桶だとしたら、中に何が入ってると思ってるんだ?

身元不明のご遺体とかだったら、どうするんだよ。

事件だぞ。

だからこそ、シルナがぶるぶる震えているのだ。

すると。

「中身の推測なんて、してる時間が惜しいです」

怖いもの知らずのイレースが、きっぱりと言った。

「開けてみれば分かることです」

そう言って、棺桶の蓋に手を掛けた。

度胸があり過ぎる。

「ちょ、イレースちゃん危険だから!危険!危険!ピーッ!」

慌てふためくシルナ。

ピーって何だよ。警告音か?

「何も入ってないならそれで良し、骨が入ってるならそれでも良しです」

良くはねぇだろ。

「いずれにしても、こんなものに時間を食われている暇はありません。私は事務仕事で忙しいんです」

事務仕事>棺の中身だと言うのか。

イレースは、何の躊躇いもなく棺桶の蓋に手をかけ。

ガコッ、と音を立てて、棺桶の蓋を外した。

「ひぇ〜っ!怖い怖い!羽久助けて〜っ!」

ビビり散らかすシルナをよそに。

俺達は、棺桶の中身に釘付けになった。

「……………え?」

そして出てきたものに、一同、言葉を失った。