神殺しのクロノスタシスⅣ

マジで何の前触れもなくやって来たので。

俺もシルナも、最初は、何が来たのかと呆然としていた。

半べそかいていたシルナも、このときばかりは、普通にびっくりしていた。

「棺桶一丁、お待たせしました〜」

ちょっと待て。そんなものは頼んでない。

勝手に出前みたいにするな。

「な…何だ、どうしたんだ…!?それは何だ!?」

「棺桶」

と、簡潔に令月が答えた。

か、棺桶?

確かに、よく見たら白い棺桶だ。

しかも、ところどころに泥がついてるんだけど?

お前ら、これ何処から持ってきた?

「何で棺桶なんだ?シルナを入れる為か?」

「ちょ、羽久!?勝手に私を殺さないで!?」

いや、この中で一番棺桶に近い年齢なのは、シルナかなと思って。

しかし、どうやらシルナ用ではないらしい。

「畑を耕してたら、見つけたんだよ。これ、誰の棺桶?」

と、すぐり。

畑を耕してたら、棺桶を見つけた…!?

どういうシチュエーションだよ。

びっくりしただろうなぁ。

俺達もびっくりしてるけどさ。

「誰の棺桶って…そんなの、俺が聞きたいよ…」

「そもそも、この棺桶、何か中身入ってるんですかね?」

「さぁ。誰かが入ってると思って、ここまで運んで持ってきたけど…」

「なんか、予想以上に軽いよね〜。もしかして、中身空っぽ?」

つーか、何で持ってきたんだ?こんなところまで。

「埋葬場所的に、学院長のお知り合いの方かもしれないと思ったもので」

俺の心を読んだナジュが、そう答えた。

あ…。

そう…それは…。その可能性は…あるか。

イーニシュフェルトの里があった場所なんだから…。棺桶の一つくらい、出てきてもおかしくない…。

…いや、おかしいのでは?

学院を創立して、もう何年たつと思ってるんだ。

今頃、畑を耕したくらいで、ポコンと里時代の遺物が出土するとは考えにくい。

「シルナ…知ってるか?あの棺…」

念の為、シルナ本人に尋ねてみると。

「へ…?全然知らない…」

マジで知らないらしく、シルナもポカンとしていた。

だよな。

「え?学院長せんせーの知り合いじやないの?」

「そうだよ。イーニシュフェルトの里時代のお友達とか」

「いや、確かに彼らはこの地で命を落としたけど…。でも、イーニシュフェルトの里の賢者は皆長命だから、基本的に死ぬことがないし…。死んだとしても、今みたいに棺桶に埋葬する、っていう文化はないんだよ」

そうなんだ。

それは初めて知った。

「え?じゃあこの棺桶って何?」

俺達が知りたいよそれは。