「どーしたのさ、『八千代』」

「走ってたら、そこの女の子の泣き声がしたから、何かあったのかと思って」

成程。ギャン泣きだもんねツキナ。

「どうしたの?それ何?」

「棺桶」

「何処から見つけたの?」

「畑の中。耕してたら出てきた」

「中、誰がいるの?」

「さぁ」

干からびたミイラとかかな?

ツタンカーメンとか?

開けてびっくり玉手箱、だったりして。

「何で、学校の中に棺桶があるんだろう?」

「知らない。どーしよ?これ」

「うーん…」

ギャン泣きのツキナの頭を、よしよしと撫でながら。

『八千代』と二人で、棺桶の処遇について悩んでいたら。

そこに。

「何だか騒がしいですね。何やってるんですか?」

「あ、不死身先生」

「ナジュせんせーじゃん」

園芸部のなんちゃって顧問、ナジュせんせーが現れた。

途端。

「うわぁぁん、ナジュ先生〜っ!!」

あっ、こら。

ツキナが、ナジュせんせーの姿を認めるなり、ナジュせんせーの胸に飛び込んだ。

こ、こんの…!

「お?どうしたんですかツキナさん」

「ぶぇぇぇぇん!」

…釈然としない。

何で?何でナジュせんせーを見つけるなり、ナジュせんせーに飛びつくの?

「やっぱり、僕がイケメンカリスマ教師だからじゃないですか?ふふ、悪いですねぇ」

何だ、その勝者の笑み。

めっちゃムカつく。

「この女誑し教師…」

イレースせんせーに言いつけてやろうか。

「呪われちゃう〜!ナジュ先生〜っ!私呪われちゃうよぉぉぉ」

「へぇ?どうしたんですかいきなり…。大丈夫ですよ、あなたは呪わせませんって」

「ふぇぇぇぇん!」

泣き止まないツキナである。

「…どうしたんですか?本当に、これ」

「…これだよ」

俺は、さっき掘り出した棺桶を指差した。

ナジュせんせーなら、詳しく説明しなくても、心読めば分かるでしょ。

「あー、成程。ふーん…分かりました」

と、ナジュせんせーは頷き。

「大丈夫ですよツキナさん。棺桶に鍬を突き立てたからって、呪われやしませんから」

「うぇぇぇ、でも、だってぇぇ」

「大丈夫。ようは、もっと罰当たりな人間がいれば良いんでしょう?そうしたらそっちを呪うはずだから…。よいしょっと」

「えぇぇぇ!?」

あろうことか。

ナジュせんせーは、腰掛け代わりに、棺桶に腰を下ろした。