――――――…その棺を見つけたのは、約一時間ほど前。

放課後を迎えた俺は、いつも通り、園芸部の畑に向かった。

するとそこには、ゴム手袋をつけ、エプロンをつけ、長靴を履いたツキナが待ち構えていた。

「植え付けだー!植え付けだぞー!」

野菜の苗を片手に掲げて、今日も元気いっぱいのツキナである。

あー、見てたら超癒やされるな〜。

「すぐり君っ、すぐり君っ。今日は植え付けだぞ〜!」

「うん、知ってるよ〜」

一昨日辺りから、今日植えるんだ〜ってにっこにこしてたもんねー。

楽しませてもらったよ。

ちなみに、何を植えるのかと言うと。

「冬に食べる〜♪冬野菜〜♪大きなカブは〜♪それでもまだまだ〜♪抜けませ〜ん♪」

ツキナは、るんるんと苗を持ったままはしゃいでいた。

謎の歌を歌いながら。

そう。

今日植え付けをするのは、カブである。

何でカブなの?とツキナに聞いたら。

「それでもまだまだ抜けませんしたいから!」と、元気な顔で答えてくれた。

成程、と納得した。

この上なく、納得の行く返事だった。

でっかいカブを育てて、さながら昔話のように、うんとこしょーどっこいしょー、と収穫したいんだろう。

アホだな〜とは思うけど、可愛いからズルいよなぁ。

「よーし!まずは土を耕すぞ!」

お、来た大仕事。

「また鍬を使うんでしょ?じゃあ俺がやるよー」

こういうとき、耕運機買ってくれてたら楽だったのになぁ。

全くあれは惜しいことをしたよ。

でも最終的には、害虫対策になってツキナも喜んだから、良かったということで。

すると。

「ならぬっ…!その役目は、おいどんに任せてくれい!」

鍬を持とうとした俺を、ツキナがそう言って制した。

任せてくれい、と言われて、よし任せた!と言えないのが辛いところ。

「いやー、でもツキナはへっぴり腰だから無理じゃない?」

これまで、何回土の上に尻餅ついてきたか。

しかし、ツキナは。

「何をぅ!おいどんは、先祖代々百姓やってきてんでい!今時のわけーもんにしんぺーされるほど、なまっちゃねーべ!」

相変わらず強がるなぁ。

その訛りは何?田舎言葉?

ツキナって王都出身じゃなったっけ?

「分かったよ。じゃあ百姓のツキナさん、頑張って〜」

「おうよ、任せてけれ!」

どんと胸を張るツキナに、鍬を手渡すと。

勢いよく、ぶんっ、と鍬を振り上げ。

「よいさーっ!」

威勢の良い掛け声と共に、ザクッ、と鍬が土の中に突き刺っ、

…たかと思ったら、ガチンッ!!と土の中から異音がした。

!?

「ひょえあへふぇぇぇ!?」

鍬の先っちょが、何やら金属?石?らしきものに直撃したらしく。

反動で、ツキナが面白い声を出しながら、腕を痙攣させていた。

「…だいじょぶ?」

「…」

ツキナは、びっくりした!!みたいな顔でこちらを見つめ。

「な…なんじょやぁぁぁ〜っ!?」

奇声をあげた。

「何だ今の!?じーんってなった!腕が!今、じーんって!」

そりゃなっただろうね。

「何かに鍬がぶつかったね。土の中に何かあるんでしょ」

「何かって何!?私何も入れてないよ!?」

だよね?

俺も入れてないし、そもそも畑の中に、そんな鍬にクリーンヒットして異音を立てるようなブツが、埋められているとは思えないんだけど。

普通に考えたら…大きい石?が埋まってるとか?

…でも。

「畑だよね?ここ…今年新しく開墾したとかじゃないのね?」

「ないない!去年もここにカブ植えたんだよぅ?」

やっぱり。

新しく開墾したばかりの畑ならともかく、去年もその前もずっと畑で、土は充分柔らかくなっているはずなのに。

そんな大きな石が埋まっているとは、考えにくい。

…ともあれ。