そして、辿り着いたオーネラント宅。

この家に来るのは、これで二度目だな。

二階を見上げてみたが、やはりカーテンは閉め切られ、エヴェリナの姿は見えなかった。

でも、多分あの部屋にいるんだよな…。

自分の運命はどうなってしまうのかと、不安を抱えながら…。

…心配するな。絶対、俺達が何とかしてやるからな。

「…格好良いこと言いますね」

「言ってねぇから。勝手に心を読んで、言ったことにするな」

これだから、ナジュ同伴は嫌だよ。

「さぁて、じゃあ押しますかー」

と、ナジュは躊躇なくインターホンを押す。

これで留守でした、とかだったら嫌だけど。

幸い、ちゃんとドアが開いた。

「…どちら様ですか?」

出てきたのは、不機嫌そうな顔の中年女性。

エヴェリナ母である。

惜しい。これがエヴェリナ父だったなら、ワンチャン快く家に上げてくれたかもしれないのに。

父親の方が、気性が穏やかそうだったから。

しかし、ナジュは気にしない。

「こんにちは、奥さん。いやぁ、突然お訪ねして済みません」

にこりと、人の良い笑みを浮かべてそう言った。

傍目から見れば、好青年に見えるのだろうが。

俺は、こいつの本性を知っているせいか、めちゃくちゃ胡散臭く見えた。

こういう奴が詐欺師になるんだよ。

「あぁ…はい」

イケメンカリスマ教師を自称するだけあって、ナジュの笑顔は、それなりに効果的だったようで。

エヴェリナ母は、少し扉を開けた。

どうやら門前払いはされそうもない…か?

ってか、ナジュの悪どい笑顔に騙されるなよ。

詐欺師だって絶対。

そしてナジュは、扉が充分開かれたのを確認してから。

「実は僕は、イーニシュフェルト魔導学院から来たんですが」

ようやく、身分を明かした。

若干心を開きかけていたエヴェリナ母は、それを聞いて顔を堅くした。

ヤバいか、と思ったが、しかし扉を開けてしまった手前、バンと閉じるようなことはしなかった。

相手に扉を開けさせてから、身分を明かすとは。

ナジュ、マジで詐欺師説。

しかし、今はそれが見事に刺さってるぞ。