神殺しのクロノスタシスⅣ

すると。

「はいはーい。俺はさ〜」

チョコを貪っていたすぐりが、片手を上げた。

まさかの生徒の意見。

「何でお前まで、ちゃっかり自分の意見を反映してもらおうとしてんだよ」

「だって、さっき学院長せんせー、『ここにいる皆で話し合って決める』って言ったじゃん?」

ここにいる「教師皆で」って意味だよ。

だがまぁ、生徒目線の意見を聞いてみても良いかもしれない。

教師が生徒の為を思ってやったことでも、それが生徒にとって本当に有益かどうかは、生徒に聞いてみなければ分からない。

実は、全然見当違いなことしてるだけの可能性もあるしな。

一応、生徒目線で意見を聞いておくのもアリ、

「園芸部の畑を拡張して、そして耕運機を買う」

「却下」

生徒目線じゃなくて、園芸部目線じゃねーか。

論外。

「何でさ?あと雑草駆除用に、チェーンソーもほしーなー」

お前の欲しいものを買う為の奨励金じゃないんだよ。

あと、チェーンソーは危険だから駄目だ。

あれは免許がないと使えないんだよ。

除草剤で我慢しろ。

…ともあれ。

「園芸部贔屓は置いといて、部活の為に投資するのは、悪くないかもしれないな」

「えー。園芸部だけ贔屓してよ〜」

する訳ないだろ。

園芸部に投資するなら、他の部活動にも同じく費用を回す。

成程。備品を買うのも良いが、各部活動の部費を、ちょっとずつ上乗せするのも良いな。

少なくとも、生徒の為になる。

「僕も提案があるよ」

と、手を上げる令月。

この際だ。令月の意見も聞いておこう。

「よし、言ってみろ」

「学院の警護設備に投資するべきじゃないかと思う」

…ほう?

それはまた、斬新な意見だ。

「何で警備なんだ?」

「だって、この学院って、全体的に警備がザルだから」

グサッ。

「この間も、あっさり『サンクチュアリ』の侵入を許してたし、その前は『アメノミコト』に侵入されてたし」

『サンクチュアリ』はともかく、『アメノミコト』はさすがにノーカンにしてくれよ。

『アメノミコト』の侵入を防ごうと思ったら、学院全体を覆う巨大シェルターが必要になる。

そこまでしても、やっぱり平気で侵入してきそうだから怖い。

「とりあえず、学院を囲む塀の高さを五倍にしたらどうだろう?少しは防御力上がるよ」

「…断崖絶壁じゃねぇか…」

却下。それは却下だ。

陽の光も差さない学院になってしまう。

警護設備に投資するのは賛成だが、令月のやり方は駄目だ。